研究課題/領域番号 |
18K11407
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
五十嵐 洋 東京電機大学, 工学部, 教授 (20408652)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | チームワーク / 協調作業 / 「気づかい」 |
研究実績の概要 |
複数の人間が介在する協調作業の技能要因には,個人技能と集団技能(チームワーク)がある.従来の人間機械系研究の多くは,単独作業を想定し,個人技能の支援に注力していた.つまり,想定する操作者は操作対象となる1台の機械システムのみを考慮した操作を行えばよかった.一方,協調作業では,チームメイトの動向や互いの相性などにより,個々の個人技能が高ければ集団技能が高いとは必ずしも限らない.これまで集団技能は,主に社会心理学の分野で研究されてきた.しかしその多くは,集団技能を事後アンケートで評価するものであり,作業中の協調特性をリアルタイムに数値として定量的に評価した研究例はなかった. 申請者は,他者の介在に伴う操作量の変化を,独自に定義する評価指標(「気づかい」)として機械学習を応用して抽出する手法を提案し,各種実験を通して「気づかい」と集団作業効率との相関が示唆されている.本研究課題では,このアイデアを発展させ,社会心理学知見との整合を図りながら,「気づかい」の要因を細分化し,リーダーシップ,フォロワーシップを定量化する手法を提案する.さらに,これら定量評価された協調特性をもとにチームワークアシスト,相性の定量評価を実現する.さらに,本技術の今後の応用展開に向けた,人間同士が物理的な相互作用を伴う作業タスクへと拡張することを目指し,マルチラテラル制御系によるハプティックインタラクティブインタフェースを開発する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では物理的インタラクションを伴う協調作業プラットフォームを構築し,独自に定義する「気づかい」と協調作業パフォーマンスの相関関係の解析および「気づかい」の精査を目的としている.本研究課題で想定する協調作業は,VR空間内で複数の人間が同時にプレートを把持し,プレート上に設置されたボックスをランダムに動くターゲットマーカへ近づけることを目的としている.現在,互いの発生力の共有し,物理的な相互作用を実現できる2名用の作業プラットフォームを開発済みである.今後,同時に4名が参加できる作業プラットフォームへと拡張する. 「気づかい」の精査については,互いの「気づかい」がプレート上のボックスに作用するベクトルを解析することで,それぞれ作業効率へ寄与する「気づかい」とそれ以外の外乱相当の「気づかい」に分離することに成功している.この指標から協調作業パフォーマンスとの相関解析を行ったところ,より顕著に「気づかい」が集団技能と関連があることが示唆されている.今後,さらに位相,時間差の観点からフォロワーシップ・リーダシップへの分離を試みる.
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今後の研究の推進方策 |
まず,4名での作業プラットフォームを完成させる.これまでの2名の作業環境構築で得た知見をもとに,より自然な力覚インタラクションを実現する.そして,4名が同時に「気づかい」を発揮した際の「気づかい」のバランスと協調作業パフォーマンスについて実験的な相関解析を行う.これまでの2名の協調作業と異なり,互いの「気づかい」のバランスを分散,位相差などから多角的に検討する必要がある.さらに,このうち1名を自律ロボットと見立て,「気づかい」のバランスを基にしたアシストを与えた場合に,作業パフォーマンスを向上させることが可能であるかを実験的に示す.これは,従来の単独作業のアシストとは異なり,チームワークにコミットする世界に例のない新しいアプローチである.人間機械系のパラダイムシフトを目指し,このチームワークアシストを確立する.
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