研究課題/領域番号 |
18K11414
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
大久保 雅史 同志社大学, 理工学部, 教授 (10233074)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 視覚的ノンバーバル情報 / 対面コミュニケーション / 会話の活性度 / 情報の伝達感 / 情報の伝達度 |
研究実績の概要 |
対面コミュニケーションにおいて,様々なノンバーバル情報のやり取りが行われている.複数の研究者らはコミュニケーションで交わされるメッセージ量のうち,ノンバーバル情報が65~90%ほどを占めると示唆している.すなわち,人はノンバーバル情報からより多くの情報を得ており,情報の共有や内容理解に重要な役割を果たしていると考えられている. 本研究では,自然対話による双方向コミュニケーションにおいて視覚的ノンバーバル情報を制御する手法を提案し,視覚的ノンバーバル情報がコミュニケーションにおける情報共有に及ぼす影響を伝達度と伝達感の視点から検証するとともに、提案手法の妥当性を検証することを目的とする. 本年度は,視覚的ノンバーバル情報の連続的な制御を行うため、付加する電圧によって透過度が変化する調光ガラスを用いた実験装置を開発している.さらに、本実験装置を用いたコミュニケーション実験で、コミュニケーション動作を解析することで引き込み現象を,発話音声を解析することで対話の活性化推移を推定している.また、対話者のアンケート結果等から,情報が正確に伝わった割合を示す伝達度と対話者が情報が伝わったと感じる伝達感について検証する手法の提案を行っている。実験の結果、伝達感は,視覚的ノンバーバル情報を抑制することで低下する傾向が見られた.一方,コミュニケーション動作に関して,頭部動作の相関の推移を確認した結果,時系列上で相関の高い部分が見られ,また音声に関しては,全体の発声の割合と対話の活性化の割合について各条件における結果を得ることができた. 今後、本実験装置を用いて多様なコミュニケーション実験を行い、視覚的ノンバーバル情報のコミュニケーションに及ぼす影響を検証するとともに、新たなコミュニケーションツールの開発を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,視覚的ノンバーバル情報の連続的な制御を行うため、付加する電圧によって透過度が変化する調光ガラスを用いた実験装置を開発している.実験装置は、着座した対話者の間にこの調光ガラスを設置し、対話中であっても視覚情報の制御が可能である。実験における対話は、対話者ごとの音声を指向性マイクで、動作をKinect V2で、対話全体の様子をデジタルビデオカメラで記録可能である。 コミュニケーションの客観的評価は、音声解析による会話の活性度、動作解析によるコミュニケーション動作の引き込み度、また実験者による対話の観察で行う。とくにうなずきについては、うなずきの周波数領域での同期が示唆されていることから、これについても評価指標とする。今年度、これらの解析ソフトをMATLAB上で開発し、予備実験により改良を行っている。また、対話者の主観的評価については、情報が伝わったと感じる伝達感についてはアンケート調査で行い、正確に情報が伝わった定量的な指標である伝達度については、対話者が対話後に対話のキーワードを列挙し、それの一致度を利用する手法を提案している。これらの成果については、5月に開催されるヒューマンインタフェース学会研究会で報告する予定である。 また、ビデオ画像をマスク処理することで視覚的なノンバーバル情報のみを変化させた時の視聴者への情報の伝達度と伝達感を計るとともに、視聴者の動作についても記録している。この実験により視覚的なノンバーバル情報が伝達感と伝達度に及ぼす影響について検証している。この成果については、Applied Human Factors and Ergonomics (AHFE) 2019で公表する予定である。 このように本研究課題は、順調に進んでおあり、令和元年以降の成果も十分期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した実験装置を用いて、話し手、聞き手を固定しない、自由対話で対面対話実験を行う。これまでに、申請者らは対面対話において話し手の発話音声と聞き手のうなずき、あるいは対話者のうなずきを中心とするコミュニケーション動作が同調することを明らかにしている。また、合意形成おいては、うなずきなどのコミュニケーション動作の周波数領域での同調現象が起こることも明らかにしている。そこで、視覚的なノンバーバル情報が段階的に遮られることで、これらの現象がどのように変化していくかを解析する。また、ビデオ画像をマスク処理することで視覚的なノンバーバル情報のみを変化させた時の視聴者への情報の伝達度と伝達感の検証実験を進める。 これらの実験結果から、視覚的なノンバーバル情報が伝達感と伝達度に及ぼす影響のモデル化を行う。すなわち、ビデオ視聴実験では、一方向のコミュニケーションにおける、情報の送信者のノンバーバル情報を抑制することで、その効果を検証し、対面対話実験では、情報の送信者自身の発信するバーバル情報とノンバーバル情報の割合の変化により、受信者が受け取るそれらの変化の影響を検証する。またこれらの実験結果の基づきコミュニケーションモデルの構築を試みるとともに、実験協力者による官能評価検査を実施し、視覚的なノンバーバル情報の制御がコミュニケーションに及ぼす効果について検証する。 得られた成果は、ヒューマンインタフェース学会(シンポジウム・研究会)、日本機械学会設計工学・システム部門講演会やHuman Computer Interaction International (HCII)、AHFEなどの国際会議でも積極的に発表するとともに、ヒューマンインタフェース学会論文誌、日本機械学会英文論文誌などに公表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年7月に米国で開催されるAHFE2019の大学院生の参加費用について、2018年度予算で支払う予定であった。しかしながら、他の支出が増えたため支払いを2019年度に以降することにした。そのため、2018年度に53,123円の残額が生じた。この残額と2019年度の交付金とともにAHFE2019の参加費用にあてる。
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