研究課題/領域番号 |
18K11415
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
橋本 渉 大阪工業大学, 情報科学部, 准教授 (80323278)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 収縮歪み / 注視点 / 有効視野 |
研究実績の概要 |
ユーザの周囲を映像で覆ってしまう没入型ディスプレイにおいて,頭部運動を伴った視線誘導を目的とする.一般に視線誘導では,瞬時に視線の移動ができる有効視野の範囲において,注視点を変えることで無意識的に行われている.しかし,ヒトの視野は有効視野の外に周辺視があり,周辺視においても視線誘導できる可能性がある.本研究では,頭を動かしてでも周りが見たくなるような視線誘導ができないか,没入型ディスプレイ環境を用いて検証する.ここでは,できるだけ元の映像を変質させないよう,被写界深度の変化,歪みの分布による誘導手法を検討する.2018年度の研究概要は次の通りである. 1.映像の収縮歪みによる視線誘導:映像の一部や全体を収縮させ,その収縮の中心点に視線を誘導することができるかどうかを調べた.眼球運動のみでの誘導を確認するため,曲面モニタを使用して視線誘導の可否を確認した.ここでは歪みの形状や勾配,大きさなどを変えながら,視線の誘導が顕著に観察される条件を調べた.個人差や視線の追従に時間遅れが見られたものの,おおむね視線誘導ができていることが確認された. 2.不自然さを伴わない映像の歪みの許容限界:前述の環境において視線誘導が可能であっても,表示されている内容に違和感を与えてしまうと,情報が変質してしまったり,観察者に不快さを与えたりする恐れがある.そこで,表示されている内容に違和感を与えない限度の歪みがどの程度かを調査した.こちらも個人によって好みがわかれるが,歪みとして知覚されないケースや,単なる拡大縮小として認識されるパターンがあることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
映像の収縮歪みによる視線誘導:曲面モニタにおいて,提案手法により視線誘導が可能であることを確認した.ただし,個人差が大きく,逆効果になることもあった.また,周波数分解能が低い画像に歪みを与えても,映像にはほとんど変化が見られないため,視線誘導効果が乏しくなることがわかった.動きのある映像に対しても,視線誘導の効果が低下することがわかった.上記の理由により,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
1.没入映像環境における頭部運動を伴った視線誘導:没入型ディスプレイ環境において,被写界深度や映像の収縮歪みによる視線誘導がどの程度可能か調べる.眼球運動のみならず頭部運動を同時に誘発させることが目的であるため,視線誘導が行われたかの検証には,カメラが内蔵されたウェアラブルなアイトラッカーを用いる. 2.理想視点を外したときの視線誘導:没入型ディスプレイ環境では,同時に多人数で観察することも想定される.没入型ディスプレイ環境では,映像の見え方がもっとも正確である理想視点が定められている.しかし,多人数で観察する場合は理想視点から逸脱してしまい,歪みや見切れによって映像を正しく観察できない可能性がある.そこで,任意の観察位置において,視線誘導がどの程度可能であるのか調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した視線検出装置やHMDが,当初想定していたより安価に入手できたため.2019年度の助成金は,ウェアラブルアイトラッキングシステムの購入と実験環境構築のための消耗品,実験協力者謝金に充当する予定である.
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