研究課題/領域番号 |
18K11417
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研究機関 | 岐阜市立女子短期大学 |
研究代表者 |
松浦 康之 岐阜市立女子短期大学, 国際文化学科, 講師 (30551212)
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研究分担者 |
高田 宗樹 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (40398855)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 立体映像 / 拡張現実 / 仮想現実 / 衛生学 / 自律神経 / 重心動揺 |
研究実績の概要 |
本研究ではHMDを用いたVR視聴において、視野領域のサイズの違いや視標の速度の違いが生体に与える影響について研究を行った。VR酔いの発生機序を解明することを目的に実験を行い、検討を行った。 視野領域の違いについての検討を行った。重心動揺検査の結果から、視野狭窄がある映像視聴時の方が姿勢は安定し、動揺量が低下する結果が得られた。これは、視野狭窄により周辺視野の情報量が縮小されたことで、情報処理が容易になったことが考えられる。NIRS検査の結果から、視野狭窄の影響で酸素化ヘモグロビン濃度が前頭葉で有意に増加し、側頭葉の一部で有意に減少した。これらの結果から、視野狭窄に伴い腹側視覚路が賦活化して脳血流量が増加したと考えられる。また、前頭葉で脳血流量が増加したのは、視野狭窄によって体平衡を保持する上で参照している視覚情報量が減少して、重力方向を推量する上で補完すべき情報処理が伴い、小脳への負荷が過大になったと推察される。 また、指標の速度の違いについて検討を行った。重心動揺検査の結果から、映像の違いによる差はみられなかった。このことから、視標の速度の違いは体平衡系に大きな影響を与えないことが示唆された。心電図検査の結果から、視標の速度の大きさが低い映像に比べ、視標の速度の大きさが高い映像視聴時に交感神経が亢進した。これは、視標が速く運動することで視標の認識を困難にし、視標の把握のために集中力が増し、交感神経が賦活化した可能性が示唆される。NIRS検査の結果から、視標が速く運動することで視標の認識を困難にし、視標把握のために集中度が増し、前頭葉の脳血流量が増加した可能性が示唆された。また、後頭葉で脳血流量の減少がみられた。これは、指標の速度が上がった影響で、視覚対象物の精密な視覚処理が出来なかった可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度実施した視野領域の違いと指標の速度の違いに関する実験に関する結果は、視野狭窄の影響あるいは、指標の速度の違いが、脳内の伝達経路あるいは、活性部位に変化が見られた。特に、視野狭窄時の映像視聴が生体に与える影響は殆ど検討されておらず、今回得られた結果は、今後研究を発展する上で、重要な方向性を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
若年健常者を対象にスマートグラスを装用させ、視野領域のサイズと背景色、照度の影響について、実験的評価を引き続き進めていきたいと考えている。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、実験を行うことが困難な状況であることなども勘案し、当面は、これまでの実験結果についてより詳細な解析を進めていき、実験可能な状況になり次第、実験を進め、検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度末に予定されていた研究集会・学会等が新型コロナウイルスの影響によって中止になったため、使用額の変更が生じた。また、翌年度も当面新型コロナウイルスによる影響で、当面研究打ち合わせや国際会議等の中止や延期あるいは、Webによる開催が予想される。そのため、今後増加するWeb会議用の機器を揃える。
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