研究課題
本研究では、映像酔いの数理モデル構築を目的としている。これまでに、立体映像視聴時に関わる実験および、その評価によって、知見を得ている。今年度は、これらの知見を踏まえ、主に若年者に関する立体映像視聴時の数理モデル(機械学習モデル)の構築について検討を行った。実験では、2D映像および3D映像視認時における若年者の視線運動の計測(周辺視認、中心視認)を行った。人工知能によるモデルの構築・評価には、統計的機械学習における判別問題の結果から、混同行列を求め、正解率、適合率、再現率などの指標を算出し、機械学習モデルの性能を数値化して評価を行った。実験では、中心視認時及び周辺視認時において計測した視線運動について、前処理として標準化を行った後、一定の系列長を決め、データを抽出した。抽出した時系列をデータセットとし、統計的機械学習を行い、周辺視と中心視の判別を行った。学習モデルには回帰型ニューラルネットワークにおけるゲート機構である Gated Recurrent Unit (GRU)と空間情報を捉えることが出来るConvolutional Neural Network (CNN)を組み合わせたモデルを用いた。その結果、視認映像の立体性に関わらず、系列長に依存して正解率は向上した。また、正解率は系列長が10秒の95.7%が最大であった。また、視認映像の立体性によらず、系列長を20秒間にした時の適合率が減少した。これは周辺視認時において20秒間に数回程度、不随意に生じる衝動性眼球運動は、中心視認時に含まれるフリックと同様の運動パターンであるため、周辺視が中心視に判別された可能性が示唆される。
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