研究課題
ゲノム疾患研究領域におけるオントロジーを真に活用するためには有用なインスタンスを生成できるか、という問題解決が必要である。この問題解決のため、open-worldを前提とするaxiomベースのオントロジーに、closed-worldにおけるドメイン特異的な知識を表現するフレーム理論を組み合わせた方式を試みる。平成30年度は、形式化の対象世界の調査と論点の洗い出しを行った。ゲノム疾患研究領域は、2001年のヒトゲノム配列の決定が開始時点となるが、その本格化は次世代シークエンス技術により個々人のゲノム配列が現実的となった2007年ころとなる。本研究領域が国家戦略上の地位を確立するのは、2015年の米国の前オバマ大統領によるprecision medicine initiative政策であり、更に2018年に英国から発表された500万人全ゲノム配列解析計画である。このゲノム疾患研究の歴史を踏まえ、概念化においては、本領域のサイエンスとしての役割に加えて、技術開発の役割と、更に社会実装の役割の3本の柱を意識した考察が求められる。特に3本目の柱である社会実装の役割は、本研究が「ヒト」を対象としていることに由来する特徴であり、独自の注意深い洞察が必要と考えられる。本年度においては、これらの論点の整理のため、米国All of Us、英国 Genomic England, UK Biobank、豪州 Australian Genomics、カナダ Genome Canada、欧州連合 EMBL、フィンランド 国家医療システム, Biobank, Exile beacon、スイス 国家医療システム、日本 DDBJ, NBDC, DBCLS、国際 GA4GH といった、国際的に疾患ゲノムデータ共有と標準化に従事する団体/研究者と幅広い意見交換を行った。
3: やや遅れている
平成30年度においては、形式化の対象世界の調査と論点の洗い出しに加えて、近年光が当てられていなかったフレーム問題を掘り起こし、最先端のオントロジー研究成果に照らした検討を行う予定であったが、対象世界の調査に予定外の時間が掛かってしまった。
平成31年度においては、平成30年度に実施できなかった、フレーム問題の掘り起こしと最先端のオントロジー研究成果に照らした検討を行う。更に、機械学習を利用した形式化支援を目指し、対象世界のデータをDeep Learningで学習し、対象世界の特徴的なパターンを抽出を行う。
International Conference on Biomedical Ontology 2018に参加の予定であったが、本務の都合で参加日程を確保できなかった。2019年度にはInternational Conference on Biomedical Ontology 2019に参加するとともに、2019 National Initiatives Meetingにも参加して、世界における疾患ゲノム研究データの標準化について更に調査する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)
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