研究実績の概要 |
ゲノム医療研究領域におけるオントロジーを真に活用するためには有用なインスタンスを生成できるか、という問題解決が必要である。この問題解決のため、open-worldを前提とするaxiomベースのオントロジーに、closed-worldにおけるドメイン特異的な知識を表現するフレーム理論を組み合わせた方式を試みる。 平成30年度と令和元年度には、形式化の対象世界の調査と論点の洗い出しを目的に、平成30年度にはゲノム疾患研究領域を対象に、令和元年度は臨床情報を対象とした調査を行った。令和2年度は、ゲノム医療におけるオントロジーの利用について調査し論点の洗い出しを行った。ゲノム医療においては、データの機微性に応じて、open, registered, controlled, collaborationの4段階のアクセス制御を行うことが国際標準となっている。このアクセス制御を正確かつ効率的に処理できるようオントロジーが開発され利用されている。このオントロジーは、データ利用審査プロセスに実利用されている。データ利用審査時の処理において、最もコストが高いのが研究計画書と同意書のマッチングであるが、この処理にオントロジーを使用することにより、正確性と効率性が担保される。このオントロジー利用を想定して、データ利用審査のベストプラクティスが考案され、はじめての国際標準として公表される予定である。 臨床情報のデータ交換においてはHLA FHIR標準が、ゲノム医療研究領域においても多用されるようになった。このデータ交換においても、臨床情報のオントロジーが基盤となり、臨床現場で取得される臨床情報がそのままゲノム研究に利用され、更にその結果を臨床現場から患者に回付することができるエコシステムの構築を可能としている。
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