利用可能なデータの量や種類の増加に効率的に対処するため,多様な価値観に応じてネットワーク上の資源を効果的に活用するための技術の確立が求められている.そこで,このような技術の確立を目指して,本研究では,線グラフに基づくネットワークからの多重コミュニティ発見の定式化,定式化に基づく多重コミュニティ発見アルゴリズムの開発,開発するアルゴリズムの計算機システムとしての実装,の実現に取り組む. 上記の目的を実現するために,本年度は,申請者が従来から研究を進めてきたグラフ構造に基づく学習手法を発展させることを通じて,グラフ構造に基づいて多重コミュニティを発見するアルゴリズムの開発と実装に取り組んだ.具体的には,下記の項目を実施した. (1)前年度の項目(1)で行った,重み付き線グラフを構築するプログラムの改良をさらに進めるとともに,前年度の項目(2)で行った,多重コミュニティ発見指標(多重モジュラリティと呼ぶ)を計算するプログラムの改良を進めた. (2)前年度の項目(3)までに開発した学習アルゴリズムを拡張し,グラフ構造における表現行列を活用し,与えられたグラフにおける辺の重みを活用して多重コミュニティを発見するアルゴリズムの改良に取り組んだ. (3)前年度の項目(3)で実装したプロトタイプシステムの有効性を検証するために,社会ネットワーク分析の分野での評価実験において標準的に用いられるベンチマークデータなどを収集して整備し,整備したデータに対する評価実験を行い,実験結果に基づいてプロトタイプシステムの改良を行った.
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