生物は,数少ない経験から未知の多数の事象に適用可能な汎化された振る舞いを構成することができる.これは,高等生物だけではなく,小動物や昆虫などの下等生物にもみられる極めて優れた性質であり,従来の工学における「多数の事象から少数の抽象化された事象を抜き出す」という統計学的な枠組みでは説明が不可能な対照的な現象である.この生物の仕組みに注目し,本研究では,「汎化機能を実現しているものは,学習により得られる内部モデルではなく,実世界に最初から存在している普遍的性質である」との仮説をたて,この実世界の普遍的な性質を利用するためのロボットの身体の設計方法,並びに,ロボットが環境に働きかけるなかで,新たな普遍的性質を発見し,状態・行動空間を分化させ,振る舞いの精度を向上させてゆくための発見・学習アルゴリズムの提案を行う。 2021年度も,コロナ禍により大学への入校が一部制限され,ロボットの開発や実験に支障が出る状況であったが,限られた時間内で効率よく研究を行うため,既存ロボットの改良に重点をおき,「柔軟マニピュレータ」および「柱状物昇降ロボット」,「垂直壁登攀ロボット」等の改良を行った. また,これまでの知見をもとに,新しいロボットの設計にも取り組み,円筒状の柔軟ロボットを開発した. さらに,学習アルゴリズムについても検討を行い,円筒容器内の液体物の分別を行う動作を学習するアルゴリズムの提案を行った.
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