研究課題/領域番号 |
18K11450
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研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
山西 輝也 福井工業大学, 環境情報学部, 教授 (50298387)
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研究分担者 |
高橋 哲也 福井大学, 学術研究院医学系部門, 客員准教授 (00377459)
信川 創 千葉工業大学, 情報科学部, 准教授 (70724558)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | デフォルトモード / 脳波 / 同期の逸脱 / 経験的モード分解 / 数字想起 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究は脳の基底状態と考えられているデフォルトモード状態に着目し,8名の被験者に計測済みのまどろんだ状態で安静時のMEG-EEG同時計測のデータを用いてデフォルトモード状態の脳波の振る舞いの特定を試みてきた。そして,ある課題下の脳波をワイアレスのパッチ式,あるいはキャップ式の脳波センサーで計測し,デフォルトモードの脳波との差分から,ある課題下そのものだけの脳の機能的ネットワークの数理モデル化を目指しており,課題そのものの脳のネットワークの定量化はブレイン・マシン・インタフェースへの展開が容易になるであろうと考える。そこで昨年度から引き続き,モニターに映し出した1から9の数字を読ませた時の7才から17才の249名の子どもたちによる脳波 (電極はFzとCz,Pzの3電極) のオープンデータを使い,非表示時をデフォルトモードと考え、その間での脳波と表示時の脳波を使い差分からの測定電極の同定、そして解析を進めた。解析の結果は,同期性を指標としたPhase Lag Indexおよび複雑性指標としてのMulti Scale Entropyではともに249名が共通した電極での有意差を見ることができなかった。そこで,個人差があると考え,タスク時の脳波だけを用いて経験的モード分解(Empirical mode decomposition)から得られた3つの特徴量(固有モード関数の時系列な差と,固有モード関数の時系列な位相差,固有モード関数の二乗値)で評価したところ3つの電極のいづれかで1から9の数字想起のタスクの差異を機械学習によって分類可能であることが見出せた。一方,乾式脳波計で課題処理とまどろんだ状態での健常者若者の測定を予定していたがコロナ禍のため延期した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MEGやEEGの信号解析では,同期性の指標や複雑性の指標だけでなく,観測信号をAM-FM変調を持つ固有モード関数に階層的に分解する経験的モード分解(Empirical mode decomposition)でも解析を進め,1から9の数字想起のタスクの差異を機械学習によって分類可能であることが見出せた。このことは,経験的モード分解がなにの仮定もせずRAWデータそのものの解析が行えるため,データ駆動型のシステムに対して極めて有用で,Brain Computer Interfaceのための脳信号解析法の一つとして非常に強力であると考える。ただ,249名のデータ数のため今回用いた機械分類における分類損失値でばらつきがあり,最小値を探索している。また,コロナ禍のため脳波計測を予定していたが感染予防を最優先とし来年度に延期した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果をまとめるとともに, 1.乾式脳波計で数字想起などの課題処理とまどろんだ状態での健常者若者の測定と散逸評価を経験的モード分解で行う。 2.MEGのソースベースでの同期性の指標とマルチスケールエントロピー解析でまどろんだ状態と課題遂行時の評価。 3.249名の子どもたちによる数字想起の脳波を機械学習によって分類した際,最少となる分類損失値の探索 を実行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
簡易脳波計測器を購入し健常若年者の計測を実施する予定であったがコロナ禍の影響で購入ならびに実験を延期した。そのため購入費と被験者への謝金の支出がなかった。
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