本研究では,顔文字の自動生成に関する検証を行ってきた.2018年度(初年度)は,顔文字を自動生成するためのまとめ上げ手法として,ニューラルネットワークを用いた顔文字の原形推定に関する研究,並びに,顔文字を生成する基準となる「感情」に着目した,感情推定難易度の評価を行ってきた.顔文字の原形推定では約3000種類の原形に対して6割程度の正解率で分類することに成功している.感情推定難易度の自動評価については,被験者実験により感情推定のしやすさにより感情を抽出するまでの時間に大きな差があることを確認している. 2019年度は,顔文字の自動分類(原形推定)のタスクにおいてその精度向上を図った.2018年度では6割程度の正解率であったシステムを7割程度の正解率まで性能を向上させ,国際会議KMISでの成果報告を行った. 2020年度は,コロナ禍の影響が強く,ほとんど研究を実施できない状態であった.そのため,本来の目的である顔文字の自動生成の前段として,個人の性格を考慮した文生成の実験を行うことしかできていない.個人の性格を考慮した文生成の研究では,発話者の発言傾向を模倣する際,性格心理モデルとどの程度合致しているかを検証している.また,生成された発話文が,発話者本人の発話と比較して,感情推定難易度が等しくなっているかを検証している.感情推定難易度を同等とするために自動生成された顔文字の付与を検討していたが,研究実施期間内に実用性のあるレベルでのシステムを構築できていない状況である. また,顔文字の自動生成のために必要となる雑文の文単位への分割に関する研究も進めた.顔文字には一定のパターンがあるものの自動で収集するためには顔文字の途中で文が分断されないよう区切る必要がある.そのため,文区切りに関する検討を進め,F1スコアが0.87という結果が得られている.
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