研究課題/領域番号 |
18K11458
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
笹井 一人 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (00532219)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | マルチエージェントモデル / ダブルオークション / 非同期性 / 間欠性 / 自由意志 / 自己言及 / フレーム問題 / 内部観測 |
研究実績の概要 |
不確実性の高い状況における意思決定のプロセスモデルとして,尤もらしさにもとづく経験の評価を見積もりに反映させるベイズ推定が多く用いられている.可能性を限定していくことで行動選択を行う方針は,合理性に基づく判断であるが,状況認識が充分でない困難な状況においては,有効ではない.これに対して,人間は自ら可能性を広げて新しい選択肢を作り出してこれを乗り越える.本研究では,可能性を限定するベイズ推定に対して,可能性を広げる逆ベイス推定を組み合わせることで,選択肢の意味を作り直しながら意思決定を行うモデルを構築し,これを経済行動のモデルとして使用することで,人間の行うヒューリスティクスを解明することを目的としている.平成30年度においては,ベイズ・逆ベイズモデル(BIBモデル)の調査および,適用対象とする市場モデルの調査・検証を行うことを目標としていた.まず,これまで研究を行ってきたダブルオークションモデルにおける非同期的コミュニケーションとBIBモデルの関係性について分析した.ダブルオークションモデルは,買い手と売り手が連続的な時間において提出する注文が条件を満たした場合にリアルアイム処理されるモデルである.エージェントの行動モデルとして,過去の履歴に基づいて行動する合理的エージェントと,規則を持たない非合理的エージェントの2種類が規定されている.ここでは,その二元性を市場規模および時間の不定性の導入によってそれらの境界を不分離な形で表現することで,実際の市場に見られる急激な価格変動のダイナミクスが再現可能であることを示した.本年度の研究で導入した市場規模の不定性はエージェントの過大評価を行うことにつながることが解析からわかっており,BIBモデルによってよりミクロな行動モデルを構築できる可能性を示唆することに成功した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,BIBモデルの確立および,その適用モデルの選定について検討を行うことを目標としていた.ダブルオークションにおける取引の非同期性(市場規模の不定性)が,状況の過大評価を導くことを示したことにより,ダブルオークションモデルへBIB行動モデルが適用できる可能性を見い出すことができた.
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年度においては,当初の予定通りBIBモデルのダブルオークションへの適用を行い,シミュレーション結果の解析を行う.さらには,行動経済学的な実験を行い,BIBモデルの意義についてさらなる探求を行なっていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
成果発表に関わる旅費を低く抑えることができたたため,次年度のおける研究動向調査のための旅費に当てる予定である.
|