研究課題/領域番号 |
18K11465
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤崎 礼志 金沢大学, 電子情報通信学系, 准教授 (80304757)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超離散力学系 / マルコフ連鎖 / 最大周期列 / 記号力学系 / スペクトル拡散符号 |
研究実績の概要 |
任意の位数nに対して,単一のde Bruijn系列を効率的に生成するという問題に,これまで多くの研究者が取り組み,O(n)のメモリを用いて,1ビット当たりO(n)時間でde Bruijn系列を生成するアルゴリズムが提案されている.ここでOはLandauの記号である.最近,Sawada, Williams, Wongは,任意のnに対して,O(n)のメモリを用いて,1ビット当たりならし計算量O(1)で,長さ2^nの,単一のde Bruijn系列を生成するという驚く程高効率なアルゴリズムを発見した[Discrete Math, 2016].これを発見者の頭文字を取ってSWWアルゴリズムと呼ぼう.
本研究課題の超離散力学系という立場では,de Bruijn系列は2進変換の超離散化である.超離散化という視点でSWWアルゴリズムを考察し,次の結果を得た.de Bruijn系列の規格化自己相関関数は時刻t=0に値1を取り,t=0を除く-n<t<nにおいて値0を取るという零相関帯(ZCZ (Zero Correlation Zone))を有することが知られている.SWWアルゴリズムによって生成されるde Bruijn系列が,自己相関関数に関して優れた特性を有することを実験的に示し,任意のnに対して,SWWアルゴリズムで生成されたde Bruijn系列の時刻t=|n|のときの規格化自己相関関数の公式を導出した.de Bruijn系列を拡張した最大周期列として,離散化黄金平均変換に基づく最大周期列がある.SWWアルゴリズムの離散化黄金平均変換に基づく最大周期列の生成への拡張に成功した.拡張されたSWWアルゴリズムで生成された離散化黄金平均変換に基づく最大周期列の時刻t=|n|のときの規格化自己相関関数の公式を導出し,自己相関関数に関して優れた特性を有することを実験的に示した[SITA2019].
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2進変換の超離散化であるde Bruijn系列は,系列長に関して,その個数が指数関数的に増大するという優れた特性を有し,その自己相関関数はZCZを有するので,様々な分野に利用されている.しかしながら,de Bruijn系列の自己相関関数のZCZ以外の特性は上界しか知られておらず[Zhang & Chen, 1989],本研究代表者が下界を求めていた[[NOLTA,IEICE, 2011].本研究において,任意のnに対して,SWWアルゴリズムで生成されたde Bruijn系列の時刻t=|n|のときの規格化自己相関関数の公式を導出し,同時に,SWWアルゴリズムによって生成されるde Bruijn系列が,自己相関関数に関して優れた特性を有することを実験的に示したことは,de Bruijn系列の自己相関関数研究に今後の希望を示したといえる.
本研究代表者は,区分線型単調増大(PMI (Piecewise-Monotone-Increasing))マルコフ変換を定義し,de Bruijn系列を含む,離散化されたPMIマルコフ変換に基づく最大周期列を全て生成するアルゴリズムを与えた[NOLTA,IEICE, 2010].このアルゴリズムの効率化は大きな目標である.PMIマルコフ変換が黄金平均変換の場合に,SWWアルゴリズムの拡張に成功し,de Bruijn系列と同様の結果を得たことにより,離散化されたPMIマルコフ変換に基づく最大周期列の効率的生成研究の発展が期待される.
本研究課題の応用分野の一つに移動体通信がある.研究代表者が通信システムのビット誤り生起確率を解析するために開発した確率解析の手法を用いて,第5世代移動体通信(5G)に用いられる分極(Polar)符号の多段分極に基づく有限多元分極符号に関する分極定理の,加算多元分極符号への拡張を試みた[IEEE ISIT 2019].
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の要素研究:良好な自己相関特性を有するde Bruijn系列の効率的生成方法の確立に関して,上記「研究実績」の発展として,次の結果を得ている.任意の位数nに対して,単一のde Bruijn系列を効率的に生成するアルゴリズムとして,「1優先アルゴリズム」が知られていた[Martin, 1934].最近,似て非なる新しいアルゴリズム「反転優先アルゴリズム」が発見され[Alhakim, 2010],de Bruijn系列をランレングス符号化するとき,1優先アルゴリズムは辞書式に最大の符号語を与え,一方,反転優先アルゴリズムは最小の符号語を与えることが示された[Alhakim et al, 2020].SWWアルゴリズムから生成されるde Bruijn列が自己相関関数に関して優れた特性を有するのを実験的に明らかにしたことを,上記「研究実績」で述べた.1優先アルゴリズムと反転優先アルゴリズムから生成されるde Bruijn系列の自己相関関数についても調べたところ,位数n=6まで,両者はSWWアルゴリズムから生成される系列よりも良好な特性を有することを発見した.この結果は,de Bruijn系列に関して,ランレングス符号化による符号語の辞書式順序と自己相関関数には関係が無いことを示唆している.これら三つの系列の特性を利用して,良好な自己相関特性を有するde Bruijn系列のファミリーを構成することに成功した.位数n=6のとき,de Bruijn系列の総数67,108,864個に対し,構成されたファミリーの符号語数は692個,すなわち総数の約1/10^5である.今後,これら三つのアルゴリズムにより生成されるde Bruijn系列と拡張されたSWWアルゴリズムから生成される離散化黄金平均変換に基づく最大周期列が,なぜ自己相関関数に関して優れた特性を有するのかを明らかにしたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究経費を有効に使用するのはもちろんのこと,研究遂行の支障にならない程度にできるだけ節約することに努めなければなりません.旅程の工夫による旅費の節約により,245円の残額が発生しました.物品(消耗品)の購入となりますが,喫緊に必要な物品が思い当たらなかったため,次年度に使用するのが適切であると判断いたしました.物品(消耗品)費として有効に利用させていただきます.
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