研究課題/領域番号 |
18K11466
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
泰中 啓一 静岡大学, 創造科学技術大学院, 客員教授 (30142227)
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研究分担者 |
吉村 仁 静岡大学, 工学部, 教授 (10291957) [辞退]
守田 智 静岡大学, 工学部, 教授 (20296750)
一ノ瀬 元喜 静岡大学, 工学部, 准教授 (70550276)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 格子格子ロトカボルテラ模型 / メタ個体群 / 生物進化 / 共生系 / 複雑ネットワーク / Migration / 反応移動方程式 |
研究実績の概要 |
本研究は、代表者が初めて導入した格子ロトカボルテラ模型を用いて、複雑系を研究する。とくに生物進化、生態学および生物の調節機能を対象にし、実験・観測結果の説明だけでなく、実験の指針となるような理論を追求してきた。 i) 共生系のダイナミクスにより、生態学、生物進化や経営学等への応用を図ってきた。 これまで格子上の餌探索や移動はランダムウォーク(RW)が使われてきた。しかし、多くの捕食者は、RWとは異なり、長距離移動をする。このような長距離移動の効果を調べるため、交通流(一方向だけの移動)モデルを使う。交通流モデルの場合、RWの時とは大きく異なっていた。例えば、RWのときは、平均場近似理論と同じ結果に近づくが、一方向移動のときは平均場理論には近づかない。この理由は、渋滞による縞状の空間パターン形成が影響していた。また、動物‐植物系で、砂漠化の影響を調べたモデルでは、パラドクスも起きた。一般的に、砂漠化が進行すると植物の数が減少する。しかし、逆に増えることもある(パラドクス)。なぜなら、砂漠化が進行すると、捕食動物が砂漠を渡り切る前に死ぬからである。このような、砂漠化によって起きる移動動物の悲劇は、これまでほとんど指摘されていなかった。 ii) メタ個体群ダイナミクスにより、生態学の研究を行ってきた。とくに新しい点は、各パッチのサイズ(許容量)を有限とした点である。有限性によって生物拡散が妨害され、その結果として新しい現象が出現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生物メタ個体群とネットワークの研究は、全く新しい分野であることが分かってきた。我々の論文がScientific Report, J. Theoretical Biology, Physica A、J. Phys. Soc. Japanなどインパクト・ファクターの高い雑誌に、論文が多く掲載された。パッチ数が増えると、ホモジニアスなネットワークだけでなく、ヘテロジニアスなネットワークを取り扱うことができた。ネットワークがホモジニアスかヘテロジニアスかで、メタ個体群動態が大きく変わることが分かった。たとえパッチ数が2(最少)であっても、反応移動方程式から新しい結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、代表者が初めて導入した格子ロトカボルテラ模型を用いて、複雑系を研究する。本年度は、とくに経営学と感染症研究への応用を図る。 1)経営学的研究。日本には、長寿企業がたくさんある。共生系方程式を使い、資産変動の長期予測を行う。次のシナリオを考える:(a) なぜ日本には多くの老舗企業が存在するのか? なぜ長寿になり得るのか?(b)下請企業の切り捨ては、短期的には得でも、長期的には損をする可能性がある。(c) 日本では、自動車メーカ数が諸外国よりはるかに多い。この理由を説明する。これらのシナリオを企業の協調行動によって分析する。経営の価値観が「拡大成長」から「持続可能」、また短期的視点から長期的視点に転換するよう提言する。 2)感染症研究。とくに新型コロナウイルスの蔓延に関する研究を行う。従来の感染症のSIRモデルを改良し、新型コロナ感染症の蔓延の特徴を分析する。新型コロナウイルスの場合、軽症者が高い感染率を持ち、移動することがパンデミックの要因と思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
約1万円余りの未使用額が生じた。この内訳は、共同研究者(共著者)の論文別刷り代金である。当初、論文別刷りを予定していたが、不要となったためである。この金額は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、論文掲載料として使用する。
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