研究課題/領域番号 |
18K11468
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土居 伸二 京都大学, 工学研究科, 教授 (50217600)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵α細胞 / 膵β細胞 / Hodgkin-Huxley型数理モデル / 解糖系 / 血糖値 / 分岐解析 / ベクトル場の遅速分解 |
研究実績の概要 |
膵臓に点在する膵島という細胞群は,膵臓全体の体積の1-2%程度の小さな組織であるが,血糖値の制御や糖尿病に関わる最も重要な細胞が集まっている.本研究では,血糖値降下ホルモンであるインスリンを分泌するβ細胞だけではなく,血糖値上昇ホルモンのグルカゴンを分泌するα細胞,および,α,β細胞を制御するソマトスタチン分泌細胞のδ細胞を含めて,膵島の細胞集団全体をモデル化し,これら細胞間の相互作用(傍分泌効果)の態様と膵島が総体として行う血糖値制御メカニズムを解明することを目的とする.特に,ホルモンを介した細胞間の相互作用だけではなく,活動電位を介した相互作用が血糖値制御に関して決定的役割を担っていると考え,Hodgkin-Huxley型の電気生理学的モデル構築を行うことを目的としている.特に,分岐解析などの非線形動的システムの解析手法を駆使することが特徴である. 研究初年度である2018年度においては,膵島を構成する細胞であるβ細胞が示すバースト振動における遅い振動部とカルシウムイオン濃度動態の関係を分岐解析等を用いて詳細に調べた.さらに,α細胞モデルにおいて血糖値の影響を直接受けるイオン電流に注目し分岐解析を行うことで,血糖値がα細胞の活動電位及びグルカゴン分泌に及ぼす影響を検討した. 研究2年目の2019年度においては,血糖値が及ぼす膵β細胞への影響を調べるために解糖系をモデルに含むβ細胞モデルを用いて解析を行った.膵島の他細胞からの影響を外部刺激電流として考慮し,これらの要素に関わるパラメタについての分岐解析とベクトル場の遅速分解を行うことで,膵β細胞のバースト振動(すなわちインスリン分泌)に及ぼす他の膵島細胞や血糖値の影響を明らかにした.また,入力電流に対する膵α細胞モデルの応答を調べることで,膵α細胞が行うグルカゴン分泌に対する膵島内細胞の及ぼす影響についても解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵島を構成する細胞であるα細胞およびβ細胞のHodgkin-Huxley型モデルを用いて,分岐解析など種々の解析を行うことができた.「単一細胞レベルでの解析」を発展させ,これらの細胞の外部刺激電流や血糖値に対する入出力応答を詳細に調べることで,膵島内細胞の相互作用に関する知見が得られており,進捗状況は「おおむね順調に進捗している」と言える.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り,α細胞,β細胞,δ細胞など膵島細胞の解析をさらに進展させ,また,それらの電気活動と血糖値とホルモン濃度・ホルモン分泌との関係を明らかにすることで,これらの細胞が互いに及ぼす影響についても詳細な解析を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会開催の特殊状況に起因して,当初の想定より旅費が少なくて済んだことにより,次年度使用額が生じている.今年度は,可能な限り研究発表をさらに活発に行うなど,有効に使用する.
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