膵臓に点在する膵島という細胞群は,膵臓全体の体積の1-2%程度の小さな組織であるが,血糖値の制御や糖尿病に関わる最も重要な細胞が集まっている.本研究では,血糖値降下ホルモンであるインスリンを分泌するβ細胞だけではなく,血糖値上昇ホルモンのグルカゴンを分泌するα細胞,および,α,β細胞を制御するソマトスタチン分泌細胞のδ細胞を含めて,膵島の細胞集団全体をモデル化し,これら細胞間の相互作用(傍分泌効果)の態様と膵島が総体として行う血糖値制御メカニズムを解明することを目的とする.特に,ホルモンを介した細胞間の相互作用だけではなく,活動電位を介した相互作用が血糖値制御に関して決定的役割を担っていると考え,Hodgkin-Huxley型の電気生理学的モデル構築を行うことを目的としている.特に,分岐解析などの非線形動的システムの解析手法を駆使することが特徴である. 当初研究計画をほぼ完全に達成しているので,(補助事業期間を再再延長した)研究6年目の2023年度においては,さらに研究を深耕・発展させた.とくに,膵島β細胞の結合態様について大域結合による影響を検討した.さらに,膵島β細胞に限定せず,より一般的・抽象的な細胞集団の結合系を考慮することで,大域的結合という結合トポロジーが結合系の全体的挙動に及ぼす影響について,シミュレーションだけではなく詳細な分岐解析を行うことにより徹底的な検討を行った.
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