研究課題/領域番号 |
18K11471
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
大西 圭 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (30419618)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 人間ベース進化計算 / 進化計算 / クラウドソーシング / 問題解決 / 汎用性 / Webアプリケーション |
研究実績の概要 |
人間社会において発生する様々な問題は,人々でアイデアを出し合い評価し合い(相互作用)ながら解決されることが望まれる.そのような問題解決を支援・実行する技術として,人間ベース進化計算というものがある.この技術は,生物の進化に着想を得た最適化手続きである進化計算を,Webサイト等を実行場として計算機ではなく人間が実行するものである. 計算機を用いた最適化ツールである進化計算の研究はこれまで進展が著しく,それを基礎とする人間ベース進化計算も発展の可能性が大いにある.その発展を促進するためには,これまで実施されてこなかった本技術の汎用性を向上する取り組みが必要である.汎用性を高めるためには,問題解決を行う人間の貢献意欲をいかに高め,維持するかが重要である. 昨年度は,参加者の貢献意欲を高めるために,参加者の解作りと解の評価(貢献)の回数を問題解決中にリアルタイムに参加者に周知する機能を実装した人間ベース進化計算システムを開発した.また,参加者の貢献意欲の維持のためには参加者間の公平性の担保が必要と考え,参加者の解作りと解の評価(貢献)の回数を強制的に一様にする機能を実装した人間ベース進化計算システムを開発した. 今年度(2019年度)は,これら真逆の機能を実装した2つのシステムを用いた実験により,2つのことを示した.1つは,参加者への貢献度合いの周知は参加者の貢献意欲を高めることである.もう1つは,参加者の貢献度合いを強制的に一様化した場合,問題解決にかかる時間の短縮が可能で,かつ生成される解の質は下がらないことである.これらの結果は,参加者の貢献度合いを強制的に一様化した上で,量ではなく質で参加者を評価して周知することが,参加者の貢献意欲向上・維持に有用で,かつ効率のよい問題解決を可能にすることを示唆する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した対象技術の汎用性を高めるためのアイデアを,昨年度,技術に実装することを予定通り完了し,今年度は,アイデア実装済みのその技術の有用性を実験により評価することを予定通り完了できたため,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今年度,参加者の貢献度合いを,解の生成および評価回数という「量」で定義した.しかし,実験の結果は,より短い時間で良質の解に到達できることを「効率のよさ」と考える時,強制的に解の生成および評価回数を参加者間で一様化した上で,「量」ではなく「質」で参加者を評価して周知することが,参加者の貢献意欲向上・維持に有用で,かつ効率のよい問題解決を可能にすることを示唆した. この示唆をふまえ,今後の研究の方向を以下のようにする. (1)参加者の貢献の「質」を定義する. (2)問題解決中に,定義された参加者の貢献の「質」で参加者をリアルタイムにランキングし,参加者に周知する機能をシステムに実装する. (3)これまでの「量」に基づき参加者の貢献度合いをはかるシステムと,ここでの「質」基づき参加者の貢献度合いをはかるシステムを実験により比較する.
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