研究課題/領域番号 |
18K11483
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
前田 裕 関西大学, システム理工学部, 教授 (60209393)
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研究分担者 |
肥川 宏臣 関西大学, システム理工学部, 教授 (10244154)
三好 誠司 関西大学, システム理工学部, 教授 (10270307)
伊藤 秀隆 関西大学, システム理工学部, 准教授 (20268311)
本仲 君子 関西大学, システム理工学部, 助教 (70781772)
黒江 康明 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (10153397)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニューラルネットワーク / 自己組織化マップ / ベクトル場の設計 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / ロボティクス / 同時摂動 |
研究実績の概要 |
高次元ニューラルネットワークの学習法、遺伝子ネットワークにおけるリズム現象の解析・設計法、および学習法に密接に関係するデータ同化に基づくシステムのモデリング法の開発などの基礎的検討を行うと共に、周期パターン生成器の一形態として、ニューラルネットワークの学習によって構築されるベクトル場に注目し、カオス生成機構の活用によって複数の周期軌道を束ねながら学習する方式を考案するとともに、その基本性能の検証を行った。 ニューラルネットワークのハードウェア実装に関して、アナログ回路による実現では、正弦波による複素ニューロン回路を試作し、その動作を確認した。計算の精度についても想定内にあることを確認した。つぎに、学習機能も含めた複素ニューロン回路を試作し、その基本動作を確認した。自己組織化マップ(Self Organizing Map : SOM)のField Programmable Gate Array(FPGA)による実現では、周波数同期ループ(DFLL)により処理を行うニューロンを256個含むハードウェアSOMの開発を行った。このシステムは周波数変調パルスにより信号伝達を行い、ニューロン内の DFLL でSOMの演算を行うことができた。 また、マルコフ連鎖モンテカルロ法とベイズ推定によるスペクトル分解について特に推定対象であるパラメータが近い場合についての検討を行い、系統的誤差が生じることを明らかにした。 これらの手法のロボットへの応用の一例として、クワッドロータへの適用を想定し、相互衝突回避に関するシミュレーションを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
双曲型ニューラルネットワークの学習法、遺伝子ネットワークにおけるリズム現象の感度解析法、設計問題における解の存在性や、データ同化法とその応用に関していくつかの成果をあげている。ニューラルネットワークによって作られるカオス生成機構の活用によって複数の周期軌道を束ねながら学習する方式の詳細な定式化を行い、一定程度の例題に対する性能検証に成功した。ニューラルネットワークのハードウェア実装に関して、アナログ回路による実現では、同時摂動による学習機能も含めた回路の試作が完成しており、基本動作の確認が行えたことより順調に進行している。FPGAによる実現では、DFLL を使ったハードウェア SOMを Xilinx 社 Virtex-6 FPGA に実装しオンチップ学習が30MHzクロックでの動作ができることを確認し、良好に進展している。 また、マルコフ連鎖モンテカルロ法とベイズ推定によるスペクトル分解について特に推定対象であるパラメータが近い場合についての検討を行い、系統的誤差が生じることを明らかにできたので概ね順調に進展していると判断できる。 応用についても、複数のクワッドロータが飛行する環境を想定したシミュレーションにより、相互衝突回避手法に関する検証を行った。また、実機実験において位置を計測するための環境についても構築を進めており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度で進展した結果をもとに、つぎの各項目について検討する。 1)ニューラルネットワークや遺伝子ネットワークなどの生体ネットワークの解析、設計、学習法の研究や、システムのデータ同化法の研究を、さらに実装の容易さを考慮した方法へと発展させる。 2)カオス生成機構の活用によって複数の周期軌道を束ねながら学習する方式に関して、パターン生成の自由度および学習の頑健性を向上させるための要素技術の高度化に取り組むとともに、非線形系の同期現象と結びつけた応用を検討する。現状の動作速度はまだ改善の余地があると考えられる。 3)ニューラルネットワークのハードウェア実装に関して、アナログ回路による実現では、学習回路の精度向上を目指した回路の修正とこれによる安定動作を目指す。FPGAによる実現では、回路コンポーネント、特に近傍関数と呼ばれるSOM にとって重要な回路を簡単化することで動作速度の改善を目指す。 4)ベイズ推定の近似手法のひとつである変分ベイズ法を画像処理(画像の圧縮、欠損値補間)に適用する。 5)応用については、相互衝突回避手法に関するシミュレーションにより検証した内容を、実機実験においても検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会での成果発表予定に変更が生じたため、次年度の使用となった予算が生じた。 2019年度以降、成果の発表と消耗品を中心に使用する予定である。
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