人間と共存するロボットや一般道を走行する自動車が安全かつ効率的に移動するためには、歩行者をはじめとする周辺他者の挙動を予測し、それに応じた動作をすることが必要不可欠である。人間の挙動は、周囲の障害物や他者に影響を受けるが、この影響の受け方は、人間の注意に大きく依存すると考えられる。本研究では、周辺他者のうち特に歩行者に着目し、その視覚的注意を考慮した歩行者モデルの構築を目的としている。近年、スマートフォンを見ながら歩行(歩きスマホ)することによる接触事故等が問題となっているが、これは歩行者の注意がスマートフォンに集中しており、周辺他者の存在や挙動への注意が疎かになっていることを意味している。このような歩行者とロボットの衝突を防ぐためには、歩きスマホのような危険歩行を検出することが重要である。 2020年度は、2019年度に引き続き、ロボットの一人称視点から得られるセンサ情報のみから歩きスマホを検出する手法の構築に取り組んだ。特に、低コストで歩きスマホ検出を行うために、カメラ映像のみを用いた検出手法を構築した。 提案手法は、カメラ映像からの人物姿勢検出手法をベースとし、検出された人物について、まず(1) 不確実性を考慮した移動軌跡の予測、を行うことによって、ロボットと衝突する可能性があるかどうかを判別する。その後、衝突のリスクがある歩行者について、(2) 腕の姿勢および (3) 手先周辺画像の取得を行う。(3)について、HOG特徴量を用いたSupport Vector Machineによってスマートフォンを所持しているかどうかを判別し、(2)の結果と合わせることで、歩きスマホかどうかを判定する。 歩行者実験により提案手法の有用性を確認した。また、提案手法を移動ロボットやパーソナルモビリティに実装する検討を行った。
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