研究課題/領域番号 |
18K11499
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
緒方 洋輔 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任助教 (60641355)
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研究分担者 |
吉村 奈津江 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (00581315)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳機能デコーディング / 感性的評価 / fMRI / EEG / 嗜好性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、脳波(EEG)-機能的MRI(fMRI)の同時計測を用いて、選好・嗜好に関する脳活動情報を読み取るためのバイオマーカの探索を行い、それを利用した簡易的に選好・嗜好を計測する手法を確立することである。 平成30年度は、本研究全体の第一段階として、近年その手法が確立されてきたEEG-fMRI同時計測を行うことで、fMRIで測定可能な深部脳活動を高い空間分解能で計測すると同時にそれに関連した脳波変化を計測し、双方を補った形となる選好・嗜好に関連した生理学的マーカーを探索することを目的とし、予備実験として2肢強制選択による選好判断課題及び選好度レーティング課題中のfMRI計測を行った。3名の脳活動をMRI装置にて計測・解析し、選好度に関連して活動が変化する領域を抽出した。結果として、選好度評価値の中央値より高い評価を行なった画像の観察中に、低い評価を行なった画像の観察中よりも腹側線条体・腹内側前頭前皮質の活動が有意に増加する傾向が見られた。同様に、選好度評価値が近く判断が難しい2肢強制選択時には選好度評価値が遠く、判断が比較的予測可能な選択を行っている最中に比べ、腹内側前頭前皮質の活動が有意に増加する傾向が見られた。この結果は先行研究で示唆されている、腹内側前頭前皮質の活動は主観的価値と関連するという知見を支持するものである。加えて本研究では、腹内側前頭皮質・腹側線条体の脳活動から対象の選好度を予測可能かどうかを検証するために、Sparse Ordinal Linear Regressionのアルゴリズムを用いて解析を行った。結果、 約52%の精度で選好度の高低を識別することに成功した。今後は、課題となる識別率の向上を目指すとともに、EEGで測定可能な脳表層活動の抽出を試みていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者も主たる業務として参画している大型の産学官連携プロジェクトの進行のため、MRI装置の使用予定が大きく制限されてしまった上に、MRI装置の新規入れ替えなどもあり、遺憾ながら実験時間を確保できなかった。また、上記プロジェクトが最終年度であったため大きくエフォートを割くことになってしまったため、予定よりは僅かに進行が遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
予定よりはやや遅れてはいるものの、前述のとおりに予備的知見としては十分なデータが得られているため、平成31年度初頭から本実験に移行を始めるとともに、得られたデータのさらなる追加解析を行っている現状である。さらに、ディープラーニングなど、近年の発展が目覚ましい機械学習アルゴリズムを導入することで、さらなる解析を行っていくことで発展性の拡張を目指すとともに、目的である脳表層活動から選好度を予測するためのバイオマーカ検出を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は研究計画のうち環境構築の最適化と、解析用ハードウェア・ソフトウェアの導入を行ったため物品費に多くの支出があったが、残りの物品費は今年度以降の選好度測定システムの構築に使用する予定である。 また、人件費に関しては脳機能デコーディング実験の予備検討・予備実験は長時間の拘束を必要とするため、まず研究室内の同僚にボランティアでの実験参加を要請したため、今年度の使用は行っていない。これに関しては、本実験を行う次年度に全て使用する予定である。また、旅費に関しては今年度・次年度共に成果発表及び脳機能デコーディングに必要な、近年発展の目覚ましい機械学習分野のシンポジウム・研究会参加による旅費の使用が増える可能性がある。
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