研究課題
近年、二者間の円滑なコミュニケーション時に身体動作が同調する傾向にあることが心理学実験において確認されている。しかし、実社会において完全な孤立環境で二者間の対面コミュニケーションを行うことは稀である。そもそも人間は社会的な存在であり、社会的役割がコミュニケーションに及ぼす影響は計り知れない。そこで本研究では、社会性を見る上で最も基本的な三者に的を絞り、多者間コミュニケーションにおける社会的役割が身体同調に及ぼす影響について定量的に分析することを目的とした。社会的コミュニケーションの特徴は「第三者視点」の存在である。そこで本年度は、「第三者視点」の存在を前提として、教師(実験者)と生徒(被験者)という二つの役割を設定し、生徒間の相互作用が教師-生徒間の身体同調に与える影響を調べるために、次の2条件下で教師から生徒へ情報を伝えるレクチャー実験を行った:(条件1)教師役一人(実験者)と生徒役二人(参加者)が実験に参加する;(条件2)条件1の下で生徒間に壁を設け、生徒間の視覚的な相互作用を遮断する。その際、参加者全員の頭部と胸部に加速度センサを装着し、身体動作の時系列データを計測した。そして、両条件における教師-生徒間の平均身体同調度を統計的に比較した。その結果、生徒間に壁を挟んだ条件2は生徒間に壁を挟まない条件1と比較して、教師と生徒間の頭部同調の頻度が低くなる傾向にあることが示唆された。ただし、この結果は10ペア分の予備実験で得られたものであり、この傾向が統計的に有意なものであることを確認するためにペア数を増やして正式な実験を行う必要がある。
3: やや遅れている
本年度は研究代表者および連携研究者がその他の業務に多忙を極め、当初予定をしていた研究課題に取り組むための時間を十分に取ることができなくなってしまった。それゆえ、当初の予定通り「研究項目1」の実験を行う時間が取れなかった。その代わり、当初の研究計画を変更し、「研究項目2」に関する予備実験を先に行うことにした。さらに、正式な実験を行うに当たって男女均等な数の被験者ペアが必要となるが、被験者の確保に予想以上に時間を要している。
「現在までの進捗状況」の欄に記載した現状に鑑み、次年度は新たに十分な被験者数を確保して「研究項目2」の実験を行うことにより、現時点で得られた傾向が統計的に有意であるか否かを確認することを行う予定である。その上で、時間に余裕があれば「研究項目1」の実験に着手する予定である。しかし、「研究項目1」は本研究課題を遂行する上で必須ではなく順番を前後させることも可能なので、研究の進展具合によっては「研究項目3」の実験のための準備に当てることも想定している。
(理由)本年度の予算に繰越金が生じた理由として、「現在までの進捗状況」の欄に記載したように、本年度は研究代表者および連携研究者がその他の業務に多忙を極め、当初予定をしていた研究課題に取り組むための時間を十分に取ることができなくなってしまったことが挙げられる。それゆえ、当初購入を予定していた身体動作の同調分析システム一式を新たに購入することはせずに、以前から使用していたシステムを代用することで予備実験を行った。また、正式な実験を行う時間がなかったため、被験者および実験協力者への謝金の支払いなども生じなかった。(使用計画)これに関し、次年度使用額については、当初の研究計画を変更し、「研究項目2」の正式な実験を行うことを予定している。加えて、本年度の繰越金については、新たにスペックをあげた身体同調の分析システムを購入すると共に、より多角的に分析を行うために新たに数値計算用のソフトの購入に充てる予定である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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http://www.myk.dis.titech.ac.jp/2007hp/index.html