研究課題
昨年度、三者間コミュニケーションにおいて教師(実験者)と生徒(被験者)という二つの役割を設定し、生徒間の視覚的相互作用が教師-生徒間の身体同調に与える影響を調べるために、(条件1)教師役一人(実験者)と生徒役二人(参加者)が実験に参加する、(条件2)条件1の下で生徒間に壁を設け、生徒間の視覚的な相互作用を遮断する、という2条件下で教師から生徒へ情報を伝達するレクチャー実験を行った。その際、参加者全員の頭部と胸部に加速度センサを装着し、身体動作の時系列データを計測した。そして、両条件における教師-生徒間の平均身体同調度を統計的に比較した結果、条件2は条件1と比較して、教師と生徒間の頭部同調の頻度が低くなる傾向にあることが示唆された。この結果を踏まえ、本年度は、生徒間および教師-生徒間の身体動作の因果関係を調べるべく、移動エントロピーを用いて、当該実験結果で得られた参加者の身体動作に関する時系列データを統計分析した。その結果、生徒間の因果的関係性は条件2よりも条件1において強く、教師-生徒間(生徒から教師、教師から生徒)の因果的関係性についても条件2よりも条件1において強い傾向が見られた。このことから、生徒間の視覚的相互作用はお互いの協調を強化する傾向にあることが示唆された。加えて、生徒から教師への関係性(関心)は他の生徒の存在により強化されると共に、壁の存在は教師の生徒に対する関係性(関心)を強化する傾向にあることを示唆された。
3: やや遅れている
今年度予備実験に基づく正式な実験を行う予定であったが、その後、(1)研究代表者が昨年度大学を異動したことによりその他の業務が多忙を極めたことと、(2)連携研究者が産休に入ったことと、(3)教師役として実験に参加予定であった研究協力者が多忙を極めたことと、(4)当初予定していた追加実験がcovid-19の影響でキャンセルとなってしまったことにより、統計的に十分な実験数を確保することができなかった。この点で、当初の研究項目1および2で予定した進展度合いからはやや遅れている。その代わり、当初の研究計画を変更し、現在得られた実験データ(身体動作の時系列データ)に対して移動エントロピーを用いた因果分析を行い、一定の成果を得た。
Covid-19の影響により来年度もどの程度実験ができるか見通せないが、実験が可能な状況になり次第、追加実験を行う予定である。一方、統計的に十分な実験数を確保することが困難な場合に備えて、本年度行った身体動作の因果分析と前年度に行った同調分析とを統合した新たなデータ分析を行うことを準備している。
(理由)本年度の予算に繰越金が生じた理由として、「現在までの進捗状況」の欄に記載したように、本年度は研究代表者および研究協力者がその他の業務に多忙を極めたことと、連携研究者が産休に入ったこと、covid-19の影響で予定していた実験や参加を予定していた学会発表が全てキャンセルとなったため、当初予定をしていた研究課題に取り組むための時間を十分に取ることができなくなってしまったことが挙げられる。それゆえ、身体動作の同調分析システム一式の中で数値計算用ソフトなど、実験直前に購入を予定していた物品を購入することができなかった。また、実験を行う時間が取れなかったため、被験者および実験協力者への謝金の支払いなども生じなかった。その他、学会への参加費用の支払いなども生じなかった。(使用計画)これに関し、次年度使用額については、当初の研究計画を変更し、「研究項目2」の正式な実験を行うことを予定している。加えて、本年度の繰越金については、新たにスペックをあげた身体同調の分析システムを購入すると共に、より多角的に分析を行うために新たに数値計算用のソフトの購入に充てる予定である。
すべて 2019 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Frontiers in Psychology
巻: 15 ページ: p.1-15
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http://www.myk.dis.titech.ac.jp/2007hp/index.html