研究課題/領域番号 |
18K11500
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研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
小川 健一朗 流通経済大学, 流通情報学部, 准教授 (90612656)
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研究分担者 |
三宅 美博 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (20219752)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 対面コミュニケーション / 身体動作同調 / 社会性 |
研究実績の概要 |
昨年度までに、三者間コミュニケーションにおいて教師と生徒という二つの役割を設定し、生徒間の視覚的相互作用が教師-生徒間の身体動作に与える影響を調べるために、(条件1)教師役一人(実験者)と生徒役二人(参加者)が実験に参加する、(条件2)条件1の下で生徒間に壁を設け、生徒間の視覚的な相互作用を遮断する、という2条件下で教師から生徒へ一方向に情報を伝達する実験を行った。その際、参加者全員の頭部と胸部に加速度センサを装着し、身体動作の時系列データを計測した。そして、生徒間および教師-生徒間の身体動作の因果関係を調べるべく、移動エントロピーを用いて、実験で得られた参加者の身体動作に関する時系列データを統計分析した。その結果、生徒間の因果的関係性は条件2よりも条件1において強く、生徒から教師への因果的関係性についても条件2よりも条件1において強い傾向が見られた。一方、教師から生徒への因果的関係性については条件1よりも条件2において強い傾向が見られた。 しかしながら、移動エントロピーは正確には時系列データ間の相互情報量の変化(情報の流れ)を測る量であり、それだけでは因果関係が明確に示されたとは言えない。そこで本年度、昨年度の分析結果を精査すべく、新たにグレンジャー因果分析を行った。その結果は多少の差はあるものの、実質的には昨年度得られた分析結果を支持するものであることが分かった。このことから、生徒間の視覚的相互作用はお互いの協調関係を強化する傾向にあることが示唆される。加えて、生徒の教師に対する関係性(関心)は他の生徒の存在により強化されると共に、壁の存在は教師の生徒に対する関係性(関心)を強化する傾向にあることが統計的に示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、データ分析の精度を高めるために、現在取得しているデータに加え、追加実験を行い新たなデータを取得する予定であったが、COVID-19の影響で予定していた追加実験を全てキャンセルせざるを得ない状況になってしまった。それゆえ、統計的に十分なサンプル数を確保することができなかった。この点で、当初の研究計画項目からはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本年度計画していた追加実験を行う予定だが、変異株が拡大しつつあり、ワクチンの接種の現状を考えると、追加実験を確実に行うことができるか否かは未だ不明であり、代替案を計画する必要がある。その場合、現在得られているデータ(身体動作の時系列データ)に対して、現在までに行った同調分析の手法と統計分析の手法を再検討する計画を立てている。具体的には、これまでタイムラグをパラメータとした周波数解析と相関分析に基づく同調分析を行ったが、それに加えて周期性の詳細を調べるためにリカレンスプロットを用いたカオス同期分析を行うと共に、サンプル数の不足を補うため新たにベイス検定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、本年度研究活動を大幅に制限せざるを得なくなった。それゆえ、新たな実験を行うことができず、加えて、学会や研究会等の活動も全てオンラインとなるなど、当初計画していた研究の停滞を余儀なくされたため、本年度使用予定であった経費が残った。それゆえ、本研究課題について補助事業期間延長を提出し受理されたので、本年度計画していた研究を行うために繰越金を使用する予定である。 ただし、新たな実験を行うことができるか否かは未だ不明なため、既存のデータの分析を多角的な観点からさらに進めることで、それに基づき研究成果を論文とすることに力点を置いた繰越金の使用も念頭に置いている。
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