研究課題
映像提示装置開発の歴史は,観察者に与える臨場感の飽くなき向上の歴史だといってもよい.これまで,映像提示装置の解像度や色再現性の向上,両眼視の情報付加などの方法がとられてきた.本研究では,観察者自身の立体感に関する感受性を向上させる技術によって,映像表示装置における映像の臨場感を向上させたいと考えた.開発した技術は,固視微動モデルによる動的視覚ノイズを重ね合わせることによって観察者が感じる立体感を向上させるものである.2種類の映像提示方法を実現し,それぞれにおいて効果を確認した.一つは通常のディスプレイモニタを使用したものである.提示する画像に対して動的視覚ノイズを付加することによって画像の立体感が向上することが確認できた.もう一つは,印刷された写真に対して動的視覚ノイズを含む照明光を照射することによるものである.こちらにおいても同様に写真の立体感が向上することが確認できた.これらの技術を構築するために以下の知見を得た.1)固視微動モデルによる動的視覚ノイズの生成方法.2)立体感向上に寄与するための動的視覚ノイズにおける周波数特性.3)立体感向上に寄与する動的視覚ノイズの強度.これらの成果によって,ディスプレイモニタ上の画像であっても,印刷された写真であっても,通常の提示方法と比較してより立体感が感じられる提示方法が確認できた.特に,画像に含まれる絵画的奥行き手がかりによって最適な動的視覚ノイズの周波数特性が異なることや,観察者によって最適な動的視覚ノイズの強度が異なることが明らかになった.画像的特徴や個人への依存度が高い事から,本研究成果をすぐに実用化することは難しいと考えられるが,画像認識や個人認識技術と組み合わせることによって応用が期待できる.また,脳における立体感認識能力に関するメカニズムの解明に向けての知見としても興味深い.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Proc. SPIE 12177, International Workshop on Advanced Imaging Technology (IWAIT) 2022
巻: 12177 ページ: -
10.1117/12.2625982