研究課題/領域番号 |
18K11504
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研究機関 | 佐久大学 |
研究代表者 |
川野 道宏 佐久大学, 看護学部, 教授 (00404905)
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研究分担者 |
門間 正彦 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (10274987) [辞退]
川野 亜津子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10550733)
中村 摩紀 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 准教授 (90444934)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 行為主体感 / 自己決定感 / 自己効力感 / リハビリテーション / 看護 |
研究実績の概要 |
脳卒中患者のリハビリテーション効果の向上に、患者のSense of Agency (SoA)への介入が有効な手段として期待されている。近年、脳卒中患者のSoAについて、SoAの低下が非麻痺手でも起こること、SoAが麻痺手の使用頻度と関連すること等が明らかとなってきているが、患者のアパシーや運動機能回復に伴う変化などの実態についての報告はなく、研究の進展が期待されている。本研究のゴールはリハビリテーションを必要とする患者のSoAの実態把握と影響因子を分析し、医療者の適切な介入法の検討を行うことである。しかしながら、2020年度より約3年間、COVID-19感染拡大により病棟での調査が難しくなり、研究計画変更が余儀なくされた。その間、より客観的にSoAを測定できるツールの開発を目指し、被験者がボタンを押す(能動的行為)タイミングと刺激が提示されるタイミング(刺激)の時間のズレを確認することで時間間隔の変化を捉える「Intentional Binding(IB)法」を応用した実験プログラムを開発した。昨年度は、健常者を用いた試行を繰り返し実施し、SoA測定における有効性を検証した。 また、2020年に終了した質問紙を用いた横断的調査研究「脳卒中患者の回復への意欲とFIM得点に患者の自己決定感、SoA、自己効力感与える影響」の解析を進めた。結果、リハビリテーションを受ける患者の回復への意欲を支え、FIM得点に良い影響を与えるための、自己決定感,SoA,自己効力感への介入が有効である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験では、20~22歳の健常成人に対し個人ごとに時間感覚(実時間と感覚時間との差)を測定し、各個人の通常のSoAを測定(実験1)、さらに再度通常のSoAを測定する条件(通常条件:実験2①)と、SoAを上げる条件(UP条件:被験者が興味を引く刺激を提示:実験2②)の2群に分けてそれぞれ測定した。実験終了後、個人ごとに時間感覚平均を100%としたときの実験1と実験2の測定値平均の比率を計算し、測定値平均の比率をもとに、個人ごとの実験1に対する実験2の変化率を算出し両群の変化率の平均を求めた。そして、通常条件とUP条件の変化率の平均の差を対応のないT検定を行い解析した。各群20名ずつの検定の結果、UP条件における変化率のマイナスへの偏移が認められ、本プログラムが能動的な行為による時間間隔の変化を捉え、SoAの測定に有効であること示されたが、対象をさらに増やして引き続き検討を進める。 調査研究では、リハビリテーション専門病院で訓練に参加する患者に対し質問紙を用いた横断的調査研究を行った結果をまとめた。患者の運動機能の回復程度を確認するため、診療カルテよりリハビリ開始から2か月目時点での患者のFIM得点およびBr-S得点を抽出し分析に用いた。各因子が意欲,FIM得点に影響するというモデルを検証するために共分散構造分析を行ない、自己決定感が意欲に、そしてFIM得点に影響することが示された。また、SoAが自己効力感、意欲、そしてFIM得点に影響を及ぼすことが示された。
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今後の研究の推進方策 |
作成したプログラムをもとに構築した実験プロトコールの試行を研究代表者の所属する機関にて繰り返し、プログラムの精度を確認する。そののち、本プログラムを用い健常者のSense of agencyとその影響要因について検討するための実験を実施する。また、共同研究機関付属病院内での実験を計画し、本研究助成が終了後もデータ収集を継続できるよう体制を整えていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年に引き続き、COVID-19感染拡大の影響を受け、実験計画が遅れた。2023年度は作成した実験プログラムの有効性をさらに検証したうえで、共同研究機関附属病院での実験実施の実現に向けて検討を重ねていく。本年度の使用計画として、実験の際の被験者への報奨金等、学会発表の参加費・出張費、共同研究者との打ち合わせ出張費、研究対象施設への出張費、論文発表のための諸費用を挙げる。
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