• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

体性感覚野による甘味嗜好性調節機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K11508
研究機関日本女子大学

研究代表者

宮本 武典  日本女子大学, 理学部, 教授 (10167679)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード体重 / 重力撹乱 / S1FL/HL / 視床後外側腹側核 / 視床後核群 / 扁桃体 / cFos / トレーサー
研究実績の概要

疑似的な微小重力状態を再現できる装置であるクリノスタットを用いてマウスの重力攪乱すると、味覚嫌悪記憶の獲得が抑制される。また、重力に関する情報は四肢にかかる体重から得られると考えられることから、四肢の感覚を処理する大脳皮質体性感覚野 (S1FL/HL) を破壊する実験が行われた結果、味覚嫌悪記憶の獲得が抑制され、重力攪乱と同様の結果が得られた。
6層からなる大脳皮質の深層(5、6層)を破壊すると味覚嫌悪記憶の獲得抑制が見られる。さらに、c-Fos陽性細胞数は重力攪乱されたマウスのS1FL/HL深層と扁桃体で有意に減少したことから、S1FL/HL深層は重力情報を処理し、味覚嫌悪学習の抑制に重要であることが示唆された。以上より、味覚嫌悪学習の抑制に体重が関与する可能性が考えられる。また、S1FL/HLから扁桃体へ至る味覚嫌悪学習抑制経路が存在すると考えられる。S1FL/HLに順行性トレーサーを注入したところ扁桃体への直接的な投射は見られず、視床後外側腹側核 (VPL) への投射が見られた。
c-Fos免疫染色と逆行性トレーサー(BDA3000)により検証したところ、重力攪乱をしなかった対照群に比べて、重力撹乱群ではS1FL/HL深層におけるc-Fos / BDA3000 二重染色細胞数が有意に減少した。このことから、S1FL/HLからVPLへ至る経路は重力が関与する味覚嫌悪学習抑制経路の一部であると示唆される。また、VPLに順行性トレーサーを注入することによって解析したところ、VPLから扁桃体への直接的な神経投射は見られず、視床後核群 (Po) への投射が観察された。
以上のことから、四肢によって検出された重力情報の変化は、視床を介してS1FL/HLに伝達された後、S1FL/HLから少なくともVPLとPoを経由して扁桃体へ伝達され、味覚嫌悪学習が抑制されると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

S1FL/HL深層部からBiotinylated dextran amine(BDA)のような順行性トレーサーを注入した結果、先行研究や予備的実験と同様、扁桃体への直接的な投射は見られず、後内腹側核(VPL)から視床後核群(Po)を介して扁桃体への投射が存在することが明らかになった。
また、VPLから逆行性トレーサーを用いて同定された投射ニューロンの細胞体と重力撹乱時のc-Fos陽性細胞との共発現を調べたところ、重力撹乱時に共発現が抑制されたことから、S1FL/HL深層部ニューロンが体内体重計の一部をなしていることが示唆された。
しかしながら、体重増加によっても同様な結果が得られるかどうかを検証する必要がある。また、S1FL/HL深層部から発信される重力情報が、視床の抑制性シナプス結合を通して、甘味嗜好性を制御している点においては検証できていない。

今後の研究の推進方策

VPLから逆行性トレーサーを用いて同定された投射ニューロンの細胞体と重力撹乱時のc-Fos陽性細胞との共発現が重力撹乱時に共発現が抑制されたことから、S1FL/HL深層部ニューロンが体内体重計の一部をなしていることが示唆された。次年度は、体重増加によっても同様な結果が得られるかどうかを検証する必要がある。
また、S1FL/HL深層部から発信される重力情報が、視床の抑制性シナプス結合を通して、甘味嗜好性を制御している点においては検証できていない。S1FL/HL深層部ニューロンの投射部位でGABA作動性ニューロンの軸索終末のマーカーであるGADやVGATとBDAの二重染色を行い、共焦点顕微鏡を用いて抑制性投射の有無を確認する。なお、方法については、別途のプロジェクトにおいて、既に確立している。

次年度使用額が生じた理由

今年度支給額に使用しきれなかった少額の余剰金が生じた。これを次年度に繰り越して次年度支給額と合算することで、より効率的で有用に使用することとした。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] マウスの新奇恐怖および味覚嫌悪記憶の週齢差2018

    • 著者名/発表者名
      吉田彩乃, 鮎川紫苑, 渡辺愛子, 藤原宏子, 佐藤亮平, 宮本武典
    • 雑誌名

      日本味と匂学会誌

      巻: 25S ページ: S69-S72

    • 査読あり
  • [学会発表] Synaptic plasticity induced by androgen in the brain area related to extinction memory acquisition after conditioned taste aversion in mice,2018

    • 著者名/発表者名
      Ayukawa S, Yoshida A, Eda-Fujiwara H, Satoh R, Watanabe A, Saito R, Tsuneoka Y, Miyamoto T
    • 学会等名
      第95回日本生理学会大会
  • [学会発表] 時期依存的なアンドロゲンの作用により誘発される味覚嫌悪学習後の消去記憶関連脳部位におけるシナプス可塑性2018

    • 著者名/発表者名
      鮎川紫苑、渡辺愛子、齋藤理佳、藤原宏子、佐藤亮平、宮本武典
    • 学会等名
      第89回日本動物学会大会
  • [学会発表] マウスの新奇恐怖および味覚嫌悪記憶の週齢差2018

    • 著者名/発表者名
      吉田彩乃、鮎川紫苑、渡辺愛子、藤原宏子、佐藤亮平、宮本武典
    • 学会等名
      日本味と匂学会第52回大会
  • [学会発表] 味覚と視覚との相互作用に伴う快不快情動の変化によって賦活されるヒト前頭前野脳領域のfNIRSによる解析2018

    • 著者名/発表者名
      川内寧子、植草舞子、佐藤真生子、佐古隆之、宮本武典
    • 学会等名
      日本味と匂学会第52回大会
  • [学会発表] 味覚のトランスダクションと味覚嗜好学習に関する研究2018

    • 著者名/発表者名
      宮本武典
    • 学会等名
      日本味と匂学会第52回大会
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi