研究課題
前年度の研究において、甘味に対する味覚嫌悪学習の重力撹乱による抑制は、体内体重計が存在すると思われる四肢に関する第一次体性感覚野(S1Fl/HL)深層部から視床を経て扁桃体に至ることに加えて、内臓情報の扁桃体への伝達経路に含まれる視床内背側核群(MD)が、この伝導路に介在することが示唆された。一方、飢餓条件下で生じる甘味嗜好性記憶の獲得・保持が、体重回復によって抑制されることが分かっているが、これに関する伝導路も視床を介すると考えていたが、体重回復が急速に起こることによって、見かけ上、甘味嗜好性が生じていない場合でも、甘味嗜好性記憶が保持されることを見出した。この結果は、甘味嗜好性抑制機構には扁桃体の関与は必須ではなく、情動行動の出力部位である報酬系が重要であると考えられた。そこで双方向性トレーサーをS1FL/HLに注入して投射先を再検討した結果、側坐核への出力部位である外側中隔核への投射を観察するできた。また、重力撹乱によってc-Fos陽性細胞数が有意に増加するとともに、甘味呈示で生じたc-Fos細胞数は、人工的な体重負荷で増加した。以上の結果は、①重力撹乱による甘味に対する味覚嫌悪学習の抑制機構と飢餓条件下における甘味嗜好性の体重による抑制機構は表裏一体の関係にあること、②いずれにおいても甘味嗜好性記憶の獲得・保持機構と重力による甘味嗜好性の修飾機構とは独立で並列的であること、③甘味嗜好性記憶の獲得・保持機構は味覚情報と情動が扁桃体で連合することで生じるが、体重による甘味嗜好性の抑制はS1FL/HLに送られた重力情報が、中隔核を介して側坐核の甘味応答性ニューロン群を抑制することで生じることを示唆する。本研究を通して、重力によって報酬系が直接的に影響を受けることが明らかになった。これは、本格的な宇宙時代を迎えるに当たって、留意されるべきに重要な知見である。
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Journal of Magnesium Research
巻: 39 ページ: 37-45
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 1618
