研究課題/領域番号 |
18K11509
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
舟橋 厚 日本体育大学, 体育学部, 教授 (10190125)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害児 / 共感的行動の発達 / 笑顔 / 表情識別インターフェース / オキシトシン濃度 / 定量的測定 / アイコンタクト / 笑顔とアイコンタクトの同期 |
研究実績の概要 |
自閉症児に動物介在活動・療法(セラピー犬による)を実施すると、笑顔の増加や社会的にポジテイブな行動の増加が起きることを笑顔識別インタフェースにより定量的に観察されることを本研究に先立つ先行研究で明らかにしてきた。最近、犬と飼い主が見つめ合うと双方に脳内オキシトシンの分泌量が増えることが他の研究者の研究で報告された。そこで、犬と触れ合うことで笑顔量が増えた自閉症児ではこの脳内オキシトシン濃度がどのように変化するかについて、自閉症児とセラピー犬のふれあい(動物介在療法セッション)を実験状況で継続的に観察したのが本研究である。具体的には、自閉症児の笑顔や社会的にポジテイブな行動が増加した場合にオキシトシンの尿中濃度がどのように変化するかを動物介在療法のセッションを体験させた前後の行動観察および尿中オキシトシンにより検討した。10名の自閉症児と10名の普通児(年齢は平均12.5歳)が個別セッションによる動物介在療法セッションに参加した。両群を比較検討したところ、犬と触れ合う際の笑顔やポジテイブな社会的行動の増加量については、セッションを重ねると普通児の方が自閉症児より、これらの指標に関して、多量に表出した。一方、オキシトシン濃度の変化については、本実験に参加した児童おのおのについてセッション前後に尿を採取をして、オキシトシン抗体を用いて、生化学的検定により、変化量を解析した。尿中オキシトシン濃度の変化についても、動物介在療法セッション後にオキシトシン濃度が増加する人数は、普通児の方が自閉症児よりも多いことが観察された。ただ、自閉症児の中でも笑顔の増加や社会的にポジテイブな行動がセッションを重ねるにつれて非常に増加したケースが3名観察され、これらの3名についてはオキシトシン濃度が普通児と同様に動物介在療法セッション後に増加する傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画はおおむね順調に進展している。途中、新型コロナ感染症の日本内万円が起きたが、すべてのドッグセッションは新型コロナ感染症による非常事態宣言の前に完了していたので、データ採取に関する遅れは幸いなく、研究展開ができている。今後は動物介在活動を本実験設定で実施した自閉症児および対照児童から得た行動データの解析と尿内オキシトシン濃度の生化学的検定を継続して、データ解析の完成を目指す。ただ、オキシトシンの生化学的解析については、担当している研究者の研究環境の都合により、少し延滞気味であるが、彼の研究環境の改善が今年度には改善し、解析が完了することを祈念する。
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今後の研究の推進方策 |
自閉症児の笑顔増加やセラピードッグと自閉症児が見つめ合う時間量とオキシトシン濃度の変化の関係を、より詳しく解析するために、今までの研究参加自閉症児の中で、笑顔や社会的にポジテイブな行動および犬と見つめ合う行動を多発させた児童3名について、さらに、追加のセッションを実施して動物介在療法を継続することにより、笑顔や犬の顔部分を つめる行動量変化とオキシトシン量の変化の関連性を検討する追加実験を計画している。 ただ、新型コロナ感染症が落ち着いてきているとはいえ、参加児童が自閉症児であることから、ご本人から継続参加の意思をいただけるか、あるいは、保護者の方から協力を得られるかなどが重要な要因であるため、今後いつから追加実験を実施できるかは流動的ではある。ただ、いつ実施が可能となってもすぐに開始ができるように、準備をしておく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年から2023年初めにかけては、コロナ感染症が未だ落ち着いてはいなかったため、自閉症児の研究参加がご父兄から許可をいただくまでに至らず、追加のデータ収集を実施することが出来なかった。
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