研究実績の概要 |
白紙や白布などの白色製品は,白さの程度によって価値が左右されるため,白色度の定量化が古くから行われている.しかし,白色物体表面の凹凸による陰影が白色知覚に与える影響は,ほとんど解明されていない.本研究は,質感情報が白色度評価に与える影響の定量化を目的とした. 令和元年度末までに,輝度変調によって表現したテクスチャを有する近似白色画像は,平均輝度以上に明るくより白く知覚されること,テクスチャの異方性が低下するとこの増白効果は減少することを明らかにした.研究3年目となる令和2年度では,表面に凹凸を形成した石膏サンプルを用い,物体表面の凹凸による陰影が白色知覚に与える影響を検討した. 表面に凹凸を形成した石膏サンプル(標準刺激)と表面が平滑な石膏サンプル(比較刺激)を並置し, 隔壁を挟んでそれぞれ独立した白色LED光源(相関色温度7800K)で照明した.被験者に一定照度で照明された標準刺激と白さが等しくなるように比較刺激の照度を調整させ,その時の比較刺激の輝度(主観的等価輝度)を記録した.標準刺激は, 凸部を形成した3種類, 凹部を形成した3種類の合計6種類を用意した. 視感評価実験の結果,いずれの標準刺激についても,主観的等価輝度は標準刺激の平均輝度よりも5~20%程度高く,表面に凹凸のある白色物体は,その平均輝度以上に明るく,より白く知覚されることが明らかとなった.また,輝度の標準偏差が大きい標準刺激ほど,主観的等価輝度がより高くなる傾向にあった. 以上の結果から,高輝度の成分を相対的に多く含む表面ほど明るく,より白く知覚されること,低輝度の成分は,主観的等価輝度に与える影響が小さいことが明らかとなった.これは,物体表面の低輝度部分は,低明度表面としてではなく,一様な高明度表面の凹凸によって生じた低照度領域として知覚されるためと考えられる.
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