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これまでの研究成果から，質感の高いとされる黒色には赤色と青色が関係しており，赤色味がかった黒色は質感が高いが，赤色味が強すぎると質感が低下する傾向があった．この結果は，試料が樹脂板の場合に得られた結果であり，他の材質でも同様の結果が得られるか不明であった．そこで質感の中でもとくに大きな影響を与える「深み感」に焦点を絞り，最も深み感が高く感じられる赤色と青色の色味を特定しようと考えた．2019年度までの研究では，着色した黒色の樹脂板を試料としていた．この問題点は，試料の厚さを任意に変えられないことであった．そこで2020年度の研究では，試料を液体に変更し，試料の厚さを任意に変えられるようにした．試料を液体に変更することにともない，新たに実験装置を開発した．
黒色の質感の評価は，人の感覚そのものを測定する官能評価を用い，結果を統計的に解析することにした．試料は，230 mlの水に対して0.3 gの黒色塗料を加えた溶液を基準とした．この基準とした試料に，赤色塗料を0.2 gずつ５回に分けて加えた溶液を，官能評価での観察試料とした．これと同様に青色の試料も５種類，製作した．これらの試料を５人の被験者に観察ブースを用いて観察してもらい，官能評価に関するアンケート調査を行った．アンケート調査の結果を，サーストンの一対比較法を用いて解析した．その結果，最も尺度値が高い試料は，赤色塗料が0.8 gの試料と青色塗料が0.4 gの試料であった．このことより，深み感が最も感じられる最適な色味があるということがわかった．
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