前年度までにおいて、自由エネルギーランドスケープの粗視化を行うアルゴリズム、並びに連続時間マルコフ連鎖のマスター方程式を数値的に解く転写中フォールディングのRNA二次構造ダイナミクスシミュレーションプログラムの開発を行ってきた。本研究課題では塩基対レベルに粗視化されているRNA二次構造情報をさらに粗視化し、二次構造の局所解レベルで粗視化されたエネルギーランドスケープを独自アルゴリズムで近似し、その局所解間の状態遷移確率をアレニウス則に基づき算出する。最終年度では、このエネルギーランドスケープの近似部分についてより計算量を削減する方法論の検討を行い、二次構造ダイナミクスシミュレーションプログラムに実装した。前年度のものよりもより効率的に計算を行うための改良を施したRNA二次構造ダイナミクスシミュレーションプログラムを用いて配列長46塩基のRNAシュードノット配列に対して転写中フォールディングの二次構造ダイナミクスシミュレーションを実行した。シミュレーション実行後に得られた二次構造分布において、Pseudobaseから取得したリファレンス構造とよく類似したシュードノット構造が最も支配的となる結果を得ることができた。この結果については第10回生命医薬情報学連合大会にて研究報告を行った。本研究課題で開発した手法について現在英語論文を執筆中であり、国際専門誌へ論文投稿することを予定している。
|