研究課題/領域番号 |
18K11525
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐藤 賢二 金沢大学, 生命理工学系, 教授 (10215783)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生物行動 / 深層学習 / 位置推定 / 姿勢推定 / 動作認識 |
研究実績の概要 |
令和元年度は動物の行動認識について以下の研究を行った。 ・動物の行動解析で深層学習を用いた高精度なセマンティックセグメンテーションを行う場合、特定の動画に特化して精度を高めることはできるが、少ない種類の動画データから汎用的なモデルを構築するのは難しい。これを解決するための基礎研究として、単色背景で撮影してプログラムで切り抜いたオブジェクトと、ランダムに選択した背景を合成することにより、学習データの量を人工的に増やすデータ拡張を行い、その効果を実験的に調べた。学習器としてU-Netを用い、様々なオブジェクトと背景の組み合わせで実験を行ったところ、背景合成を用いてデータ拡張を行うことで正解率が向上することが分かった。その一方で、オブジェクトの種類数を一定に保ったまま背景の種類数を増やしていくと、ある点から逆に正解率が下がることが分かった。 ・痛みがマウスの行動に与える影響を解析した。人工的に痛みを引き起こすためにホルマリンを投与したマウスと、生理食塩水を投与したマウス、何も投与しないマウスをそれぞれ5~6匹ずつ用意し、オープンフィールドおよび高架式十字迷路における行動を撮影してトラッキングし、行動解析を行った。類似行動をクラスタリンググループ間の比較を行った結果、3種類のグループに特有な行動を抽出することができた。 ・檻に入った実験動物の行動解析を容易にするため、Deep Flow Guided Video Inpaintingを用いて檻に隠れた部分の修復を行った。固定視点の動画の場合、そのまま適用しても従来法より低い精度だったが、動画を加工して人工的な視点の移動を導入することにより、平均的なエラーを従来法の半分程度に抑えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスやフェレット、ショウジョウバエなど、実験動物の行動認識を中心に研究を進めている。これまでに、DeepLabCutなどにより認識されたキーポイントに基づいて、いくつかの特徴的な行動を高精度に検出する手法と、複数グループの動物行動においてグループ固有の行動を自動的に抽出する手法を開発した。関連して、動物の位置トラッキング結果に基づく行動解析や、基礎研究としてのセグメンテーション手法およびオクルージョン復元手法に関する研究も進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、引き続き実験動物を主な対象として、キーポイントに基づく行動認識をさらに進め、ユーザが指定した任意の行動を高精度に認識する手法の開発を行う。併せて、単色で体表の模様等が無い動物に対するオプティカルフロー計算手法の改善など、特定の条件下における動物行動認識手法の開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由)前年度に大きな未使用額があったことと、予定していた論文投稿が年度内に終わらなかったこと、年度末に予定していたいくつかの出張が自粛要請で見送りになったことが主な理由である。
計画)出張については令和2年度も目途が立たない状態だが、状況を見て積極的に使用する予定である。論文は現在投稿中のため、順次予算を使用する予定である。他には、9月の国際会議の招待講演でも使用する予定である。
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