研究課題/領域番号 |
18K11526
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 有己 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10511280)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | RNA / G4重鎖 / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
近年の網羅的解析により、細胞内に発現するRNAの大多数がタンパク質をコードしない非コードRNA (ncRNA) であることが明らかとなった。G4重鎖は核酸中のグアニンに富んだ配列に形成される特殊な高次構造であり、ncRNA中に豊富に存在している可能性が近年指摘されている。しかし、生物学的意義や異なる種間での保存性、そのゲノム全体での規模など未解明な部分が多い。本研究では、比較構造情報解析を行うことで、従来見過ごされてきたncRNA中の種間で保存されたG4重鎖領域をゲノムワイドに同定することを目的とする。具体的に、G4重鎖候補領域を深層学習により予測した後、それら構造情報をもとに種間での比較構造解析を行うことを目指す。 今年度は昨年度に引き続き、G4重鎖の予測器を畳み込みニューラルネットワークモデルに固定し、訓練データおよびテストデータを用いて性能評価を行った。この時、3層型のニューラルネットワークに基づく既存の手法との比較検討を同時に行った。訓練データは昨年度と同様に、G4重鎖に特化したシークエンシングから得られたデータをもとに生成したが、テストデータに関しては、実験的にG4重鎖の形成の可否が分かっているデータに加え、別法のG4重鎖を検出するシークエンシングから得られたデータを採用した。計算機実験の結果、提案手法は既存手法と同等以上の識別能力を示したが、パラメータの値に大きく依存することが分かった。以上より、現状より柔軟なモデル化が必要であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
G4重鎖の予測器のモデルを確立できていないため、本研究課題の進捗はやや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
より柔軟な深層学習モデルを実装する予定である。具体的に、ResNetに代表されるような、ニューラルネットワークの層の入力を参照する残差関数を学習するようなモデルを組み込んで、G4重鎖の識別能力の向上を目指す。次に、ヒトとマウスといった異なる生物種間の非翻訳領域で、G4重鎖の保存領域の同定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は昨年度の追加使用額を含めて多めに支出したものの、研究代表者の都合により、旅費の使用額が当初の予定より少なくなり、次年度使用額が生じた。 翌年度の使用計画は以下の通りである。 物品費として、ノートPC、周辺機器、情報学、生物学関連図書を計上し、研究調査、打ち合わせ、成果発表のための旅費、その他として学会参加費および論文掲載費を計上する。
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