研究課題
RNAアプタマーは抗体に代わる次世代技術として、医薬品分野や診断薬分野などで注目されているが、実用化に向けた分子設計には多くの時間と費用が必要である。本課題は、RNAアプタマーが標的分子をどのように認識し結合するのか、その分子認識メカニズムを計算化学から明らかにすることを目指している。本課題により、論理的根拠に基づいたRNAアプタマーの設計が可能になり、RNAアプタマーの開発効率を飛躍的に向上させられると期待できる。当該年度では、前年度に引き続き、申請者らが構築した修飾核酸に対する分子動力学(MD)計算の解析プロトコルを用いて、種々の修飾RNAアプタマーに対してMD計算を実行した。抗体に特異的に結合するRNAアプタマー(IgGアプタマー)を解析の対象とし、標的分子への結合を支配している物理化学的な特性について解析した。その結果、IgGアプタマーの7番目ヌクレオチドであるグアノシン(G7)周辺の主鎖骨格のダイナミクスが、アプタマーの結合性を支配していることを見出した。また、溶液中のイオン種の違いに着目した解析では、溶液中のイオン種が異なる環境を構築し、その動的な構造変化をMD計算により解析した。その結果、カルシウムイオンはIgGアプタマーの立体構造を安定化させ、アプタマーの特異的な立体構造を保持するのに重要な役割を果たすことが明らかとなった。研究実施期間を通して本研究では、MD計算を用いたIgGアプタマーの「構造的な側面」と、量子化学計算を用いたIgGアプタマーの「エネルギー的な側面」の両面の解析から、IgGアプタマーの結合機構を理解する新たな知見を得ることができた。これらの知見は、計算化学からより結合親和性を向上させる新規の修飾アプタマーを設計するうえで重要な指針になると期待できる。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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