研究課題/領域番号 |
18K11540
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研究機関 | 東京都立産業技術高等専門学校 |
研究代表者 |
山本 昇志 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (70469576)
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研究分担者 |
津村 徳道 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (00272344)
土居 裕和 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (40437827)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 集中力 / 生体計測 / 非接触・非侵襲 / 眼球運動 / 自律神経 |
研究実績の概要 |
本研究では青年時に見られる軽度発達障害の検出に関する生体情報取得を目的としている.特定の専門分野に特異な才能を示す発達障害及び境界例の青年の潜在能力を開花させることは,本人の生活の質を向上させるだけでなく,我が国の学術・産業を活性化させる上でも必要不可欠である.しかし,現状では発達障害及び境界例患者への支援体制が充実しているとは言い難く,彼らが社会適応に困難を感じ,うつ病などの二次障害を発生してしまうケースも多い.このように問題が深刻化する一因は,専門医の数が少なく,適切な診断や治療を受けられない点にあると考える.この問題を解決するには専門医の手を借りることなく,青年期の発達障害に特徴的な兆候を客観的に検出可能な診断支援システムの開発が有効である. そのため,本年度はこれら対象者に顕著な集中力の高さを検出するための手法開発に取り組んだ.集中力は脳への血流集中や脳波信号の活性化などから推し量ることができるが,これら直接的な測定は大掛かりな医療装置や装着型機器を必要とするため,日常生活を送る中での適用は難しい.そこで我々は視線,心拍などの簡易的で非接触な計測が可能な生体信号計測に着目して,検証を行った.一方,集中は本人の取り組み方や個人によって大きく異なることが予想されるため,集中具合そのものを定量化するのではなく,集中具合を妨害の強さとして捉え,相対的な比較により集中具合を推し量る手法を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は集中力を評価するシステムの構築に注力して研究を行った.概要に述べたように,簡易で非接触な計測が可能な視線検出と心拍変動評価を組み合わす計測システムを構築した.視線検出においては脳における前頭葉領域を使う逆ストループ効果を用いる視線移動方向の選択課題を検討した.逆ストループ効果を用いた課題とは,着色された色名を示す文字が表示されたときに,文字の色に影響されずに文字が示す色名を選択するもので,文字の色に惑わされずに文字の意味を判断しなければならない高度認識過程を必要とする.今回,事前検証として課題実施中の脳波を計測した結果,正確且つ迅速にこなすためには集中力が求められることが明らかとなった.よって,逆ストループ効果を用いることにより,指示された色名と一致する色票を視線移動で選択する集中課題を構築した. 更に,この集中課題を実施中に,他の感覚的な妨害を付加することにより,その耐力で集中具合を推し量る手法を検討した.妨害としては視覚,聴覚,触覚などを検討したが,定量的且つ集中課題を妨げにくい妨害として,電気的な刺激を体の一部に付加する方法を採用した.ここで,刺激に対する感度の個人差は,事前に感度検証を行うことで,ほぼ同一の妨害効果を与えることができる.実際に色名選択の集中課題を実施中に妨害としての電気刺激を与えると,被験者10名全てで視線移動の反応が遅れることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
2019度は2018年度に構築した集中具合評価システムを用い,複数の被験者での検証を実施する.被験者には同時に発達障害に関するアンケートに応じてもらい,集中時の妨害耐力とアンケート評価結果を統計的に解析する.ただし,本研究が目的としている軽度の発達障害はアンケートや専門家の判断だけでは困難な場合が想定されるため,その他の心理的な評価手段も検討していく必要がある.例えば,軽度発達障害の青年は計算課題や形状判別など,特定の知的処理に強い傾向があるため,IQやSPI試験の併用なども検討を行っていく. 更には,視線移動だけでなく,心拍変動による自律神経系の乱れや,実施中の表情検出など,課題実施中の微妙な変化を見逃さないための追加的な生体計測についても検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
R1年度前半で表情か視線のいずれがストレスとの関連性があるかを見極め,後期に光速度カメラ又は高速度試験検出装置を購入することとする.
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