研究課題/領域番号 |
18K11540
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研究機関 | 東京都立産業技術高等専門学校 |
研究代表者 |
山本 昇志 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (70469576)
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研究分担者 |
津村 徳道 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (00272344)
土居 裕和 国士舘大学, 理工学部, 准教授 (40437827)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 集中力 / 生体計測 / 画像処理 / 深層学習 / 手動作 / 自律神経 |
研究実績の概要 |
本研究では青年時に見られる軽度発達障害の検出に関する生体情報取得を目的としている.発達障害は決して能力が低下しているわけではなく,特徴的な作業,特に集中や記憶などの特化した能力を発揮することが知られている.そのため,昨年度から顕著な集中力の評価に取り組んでいる.今年度は集中的な作業として,手先の器用さを評価として取り組んだ. 手先の器用さは訓練などの後天的要素が主であると考えられているが,関連研究を調査すると,脳の神経網の発達にも関連があることがわかる.特に,右手と左手を同時に用いる協調作業などは,動作とは別に次を推測する思考制御が必要不可欠であり,これら能力と発達障害の関連を明らかにすることは本研究目的である評価手法の開発に大いに関連する. そこで我々はまず,作業中の手の動作を正確に測定する手法を検討した.手の動作を正確に測るには接触式のセンサによる方法が提案されているが,日常動作からの検出としては非接触であることが望ましい.そのため,手の画像から関節位置を推定する深層学習(Convolutional Pose Machines)を採用して,2方向から計測した画像で指先や関節位置を検出する方法を開発した.更に,それら2方向からの関節位置を三次元構築することにより,リアルタイムで立体的な手動作の計測を可能とした.最終的には視線の集中力,手動作の器用さ,更には知的能力のテストなどによる客観評価を組み合わせることで,青年期における軽度発達障害の評価指針を得ることを目的とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は視線検出結果から集中力を評価するシステムの構築を行った.更に,2019年度は手動作を正確に把握できる計測システムを構築し,作業中の集中力も評価可能となった.ただし,両者の情報を組み合わせて総合的に集中具合を測る手法に向けた統合システムの開発については,若干の遅れが生じている.本来,画面上に表示されたマニュアルを閲覧して手作業を行う一連の計測を計画していた.画面閲覧時には視線,実際の操作には手動作計測を連携させる予定であるが,昨年度末からのコロナウイルス感染防止のため,研究が約3カ月停止している状態である. 一方,科研を通じた国際交流については,2019年度夏にブラジルのサンパウロ大学とシンポジウムを開催するなど,一定の成果を挙げることができた.サンパウロ大学リベイラン・プレト校では医学部と物理学部が連携でこれら生体計測や精神科学の解明に取り組んでおり,今後の交流を足掛かりに,国際的な協業も視野に入れて活動を続けていく.
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今後の研究の推進方策 |
2020度は2018,2019年度に構築した集中具合評価システムを用い,複数の被験者での検証を実施する.被験者には同時に発達障害に関するアンケートに応じてもらい,集中時の妨害耐力とアンケート評価結果を統計的に解析する.ただし,本研究が目的としている軽度の発達障害はアンケートや専門家の判断だけでは困難な場合が想定されるため,その他の心理的な評価手段も検討していく必要がある.例えば,軽度発達障害の青年は計算課題や形状判別など,特定の知的処理に強い傾向があるため,IQやSPI試験の併用なども検討を行っていく. 一方で,コロナウイルスの蔓延はこれら被験者検証の大きな障害となっていることも事実である.今後,研究推進を図る予定であるが,コロナウイルスの蔓延状況に応じては,研究機関の延長も視野に入れる必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
手動作検出の精度検証を行う装置の購入を検討していたが,コロナウイルス感染症のため,未だ業者と詳細検討を行ことができていない.今後,業者との打ち合わせを行う予定であるが,外国製品故に,購入,納品共に予定より大幅に遅れる恐れがある.
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