研究課題/領域番号 |
18K11541
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
齋藤 正也 長崎県立大学, 情報システム学部, 准教授 (00470047)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メタ・ポピュレーションモデル / データ同化 / 感染症数理モデル |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症の世界的流行にともない,昨年度にひきつづき申請研究で適用する予定であって技法をコロナウイルスに換えて,研究を行った.昨年度に構成した,人の移動にともなう大都市から地方への流入のシミュレーションモデルに対して,感染者数時系列をデータ同化によってモデル構成を行い,モンテカルロ計算による流入リスクを評価した.ここで流入リスクは待ち時間,アウトブレイクサイズ,発生確率の関数とした.さらに,モデルに内在的な予測性能の特徴づけとして,介入政策や人々の行動に大きな変動がなく,再生産が力学的過程として記述できる期間を時系列から選定し,モデルに閉じた予測誤差を算定した.その結果は論文として投稿され,掲載が決定している.ただし,この計算では,計算規模とパラメータ識別性の点から年令構造が含まれていない制約があることが課題として残った.当該感染症は,時期(感染の波)によって異なる年令群が流行を駆動することがわかっているので,年齢群の考慮は重要である.次年度に文献情報による制約なども用い,年令構造が入ったモデルでモデル校正が可能かを検討したい.また,2021年末~22年始にオミクロン変異株が国内でも急速に拡大する現象が確認された.本モデルを用いて都道府県間の流入関係や順序,タイムスケールの推定を行い,学会にて報告した.空間構造のみで観察された流入系列がどの程度再現されるか等のシミュレーションベースの評価を行った後に論文化する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス流行に伴い,必要な機材(ワークステーション)の導入が遅れたために,分析に必要な数値計算を事務用のPCで行う必要があった.そのために論文の完成に必要な本計算が遅れた.
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルスの流行に関しては,3年間の流行動態,介入,行動変容が時系列として蓄積されている状況にある.流行動態の変化点に注目した遡及解析に今後取り組みたい. まず,当該感染症ではコアとなる年令群が時間とともに推移するため,年令構造をモデルに取り入れる拡張を行う.当然,変数の増大にともなう識別性の低下が考えられるので,文献情報を使った制約や地域の階層化などを検討する. 続いて,流行の変化点については残差分析によりモデルによる予測が著しく低下する時点を抽出し,これまでに確認されている株種の入れ替わりやワクチンの接種率の変動などと関連付けることを検討している.なお,モデル設定と実際の流行とが整合的な状況でのモデル誤差の分析はR3年度投稿の論文で行っている.この算定が誤差評価に利用できると考えられる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初調達予定のワークステーションと実際に調達可能であったものの差額分が次年度使用額として残った.論文投稿費,学会出張費に加え,短期滞在での共同研究のための旅費に充て,コロナウイルス流行のために実施できなかった,専門家からの助言を得る予定である.
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