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2020 年度 実施状況報告書

細胞内局在変化を起こすアイソフォームの網羅的探索と機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K11543
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

今井 賢一郎  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (80442573)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードアイソフォーム / 細胞内局在部位変化 / ターゲッティングシグナル予測 / 選択的スプライシング / 選択的翻訳開始点 / 多機能性タンパク質
研究実績の概要

本研究は、選択的スプライシング(AS)や選択的翻訳開始点(ATI)によって、アイソフォームレベルでの細胞内局在部位の変化により機能調節を行う遺伝子の新規発見及び機能の解明を目指すものである。
本年度は、より信頼性の高いデータを用いた解析を行うため、最新のデータへの更新を行うと共に、少なくともmRNAレベルでの確認が取れているアイソフォームのみを扱い、18841遺伝子(58643アイソフォーム配列)で構成されるデータセットの再構築を行った。このデータセットに対し、昨年度までに構築した独自手法であるミトコンドリア移行シグナル(MTS)予測法MitoFatesと既存手法のERシグナルペプチド(SP)予測法SignalP5.0を用いた局在化シグナルの欠失/獲得予測に基づいた探索パイプラインを用い、アイソフォームレベルで局在部位の変化を起こす遺伝子の網羅的探索を行った。その結果、ミトコンドリアに局在するアイソフォームを持つ可能性のある1268遺伝子を特定した。そのうち、741遺伝子については、アイソフォーム間で細胞内の局在部位の変化が起こる可能性があることがわかった。一方、SPを持つアイソフォームについては、3407遺伝子中、1055遺伝子において、アイソフォーム間で局在の変化が起こる可能性があることがわかった。このような傾向は、以前のデータセットに対する解析と変わらないが、より多くのアイソフォームレベルで局在部位の変化を起こす遺伝子候補を得ることができた。さらに、局在変化する可能性のあるアイソフォーム間でのドメイン構成の変化を調べたところ、MTSを持つ遺伝子、SPを持つ遺伝子ともに、約57%の遺伝子が、ドメイン構成の変化を起こすアイソフォームを生じている可能性があることがわかった。そこで、疾患関連変異かつ立体構造情報を持つ遺伝子に注目し、詳細なドメイン構造変化の解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまで、深層学習を用いたMTS予測の性能の向上の検証、MTS予測とSP予測法を組み合わせた、局在変化を起こすアイソフォーム探索のためのパイプラインの開発が完了している。そして、開発したパイプラインにより、ヒトの遺伝子に対し、ASやATIによってMTSやSPの欠失/獲得が生じ、局在部位の変化を起こすアイソフォーム候補の網羅的探索を行った。その結果、局在変化を起こすアイソフォームを持つ遺伝候補として、それぞれ、741遺伝子、1055遺伝子を見出した。また、これら遺伝子の半数以上は、局在変化を起こす可能性のあるアイソフォーム間で、ドメイン構成が変化していることもわかっており、立体構造情報を持つ遺伝子に注目し、詳細なドメイン構造変化の解析を進めている。研究計画では、本年度中に、有用な候補を見出し、実験的検証を行う計画だったが、新型コロナウイルスの影響もあり、実験的検証を行う共同研究を見直す必要が生じており、また、データセットの再構築と再解析も行ったため、研究計画の遅れ、変更が生じている。

今後の研究の推進方策

開発した探索パイプラインを用い、MTSおよびSPの欠失/獲得によりアイソフォームレベルで局在部位の変化を起こす遺伝子の網羅的探索を行った結果、局在変化を起こし、かつドメイン構成の変化が起きる可能性のあるアイソフォームを持つ遺伝子を、それぞれ、420遺伝子、606遺伝子、見出すことができた。これらは、局在変化と共に、機能変化を起こし、多機能性を示すタンパク質である可能性がある。また、ミトコンドリアは、様々な疾患とも関連性が高い。そこで、上記のMTSの欠失/獲得によって、局在変化を起こし、かつドメイン構成の変化が生じる可能性のある420遺伝子に対し、特に疾患関連変異と立体構造との両方の情報を持つ遺伝子に注目し、詳細なドメイン構造変化と機能変化との関連性についての解析を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

研究計画では、有用な候補を見出し、実験的検証を行う計画だったが、新型コロナウイルスの影響もあり、実験的検証を行う共同研究を見直す必要性が生じた。さらにデータセットの再構築を行い、再解析を行った。このため、研究計画の遅れ、変更が生じ、次年度使用額が生じた。そこで、より効率的に、局在変化を起こすアイソフォームの多機能性を解析するため、ミトコンドリア移行シグナルの欠失/獲得によって、アイソフォームレベルでの局在変化を起こし、かつドメイン構成の変化が生じる可能性のある420遺伝子にターゲットを絞る。そして、当該助成金は、詳細なドメイン構造変化と機能変化との関連性についての解析を行うためのタンパク質機能解析ソフトのライセンス費用に用いる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Structural snapshot of the mitochondrial protein import gate2021

    • 著者名/発表者名
      Araiso Y, Imai K, Endo T
    • 雑誌名

      FEBS J

      巻: - ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1111/febs.15661

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mammalian BCAS3 and C16orf70 associate with the phagophore assembly site in response to selective and non-selective autophagy2021

    • 著者名/発表者名
      Kojima W, Yamano K, Kosako H, Imai K, Kikuchi R, Tanaka K, Matsuda N
    • 雑誌名

      Autophagy

      巻: - ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1080/15548627.2021.1874133

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mitochondrial sorting and assembly machinery operates by β-barrel switching2021

    • 著者名/発表者名
      Takeda H, Tsutsumi A, Nishizawa T, Lindau C, Busto JV, Wenz LS, Ellenrieder L, Imai K, Straub SP, Mossmann W, Qiu J, Yamamori Y, Tomii K, Suzuki J, Murata T, Ogasawara S, Nureki O, Becker T, Pfanner N, Wiedemann N, Kikkawa M, Endo T.
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 590(7844) ページ: 163-169

    • DOI

      10.1038/s41586-020-03113-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Subcellular Localization of Proteins From Their Amino Acid Sequences2020

    • 著者名/発表者名
      Imai K, Nakai K
    • 雑誌名

      Front Genet.

      巻: 11 ページ: 607812

    • DOI

      10.3389/fgene.2020.607812

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] In silico search for genes having differentially localized protein isoforms via alternative splicing and alternative translation initiation2020

    • 著者名/発表者名
      Imai K, Yamada D.K
    • 学会等名
      第43回日本分子生物学会年会

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公開日: 2021-12-27  

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