研究課題
本研究は、センサを用いた兆候検知システムにより介護者の気づきを補完することで介護サービスの高品質化を目指したものである。研究計画では、兆候検知の対象を被介護者の睡眠障害と転倒危険としたが、本年度は特に被介護者の転倒危険の兆候検知に絞り込み、転倒危険兆候検知システムの実現に寄与する基礎的な実験を実験室で行った。まず、被介護者の転倒しやすさを識別する検知精度の向上を図った。これは、床に敷くマットタイプの圧力分布センサを使用して、歩き始めの数歩の歩行状態(歩幅、歩隔、速度)の測定により被介護者の転倒危険の兆候(危険性)の識別を試みたものである。具体的には、転倒しやすいタイプとそうでないタイプの実験協力者の歩行データを深層学習の利用により90%を超える精度で識別することができた。本成果をまとめた論文は昨年度に福祉工学関連の学術学会に採択され、本年度に論文誌に掲載された。次に、ベッドから起き上がる際の転倒危険性を検知するシステムの開発を行った。本研究では、人間の姿勢や動きをリアルタイムに認識できるMicrosoft社のKinect(赤外線深度センサー)により被介護者の動き(重心の中心線の揺らぎ)を把握して、それらをグラフ化し、深層学習を利用することで、ベッドから起き上がる際の、転倒した・転倒しかかったがしていない・転倒していないなどの状態識別を試みたものである。本成果をまとめた論文は、学術学会誌に掲載された。研究期間全体を通して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響から研究計画を大幅に変更せざるを得なくなったが、実験室内での実験協力者を対象とした実験により、「睡眠障害兆候検知システムの開発」および「転倒危険兆候検知システムの開発」研究それぞれの検知精度の向上を実現することができた。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
日本福祉工学会誌
巻: Vol.25, No.1 ページ: 29,34
Sensors and Materials
巻: Vol.35, No.11 ページ: 3871,3881