令和4年度は,最終年度として学習者および教授者の要求する技能熟達度から,熟達度に対応した注意要因と評価項目を選択することが可能なユーザ指向型技能情報構造化システムの開発を行った. 本研究課題の目的は,ユーザ(教授者,学習者)の要求する技能熟達度に対応する重み付けにより,評価項目を選定することが可能なユーザ指向型技能情報構造化システムの開発,および構造化技能情報と熟達度に対応した評価項目による新たな技能学習プログラムの創出機能による学習支援システムの開発である.従来の身体技能に関する教育手法では教授者主体で構築されている技能情報を,視覚化した構造化技能情報によって学習者主体に再構築した.これにより目標とする熟達度に必要な技能情報と,学習時に注意すべき要因と学習成果の評価要因を明確にすることが可能となった.特に被覆アーク溶接の品質向上に直接関わるアーク状態と溶接棒の関係性,および溶接ホルダの操作とその上腕部を中心とした身体操作について,学習者自らが新たな知識を見出すことが出来た. 新たに得られた各要因の情報と関係性を基に,予め用意をしていた基本技能学習モデルを,学習者の目的とする身体技能習得に適応させて,技能時の注意要因を再構築することで,実際に溶接品質を向上することが可能となった.さらに,学習者が自らの身体技能について言語化するようになり,教授者との技能情報共有でモチベーション向上と効果的な学習が可能となった.これらの成果は,個別対応として扱っていた身体技能情報を,構造化,視覚化することで教授者だけでなく,学習者自身も自身の体性感覚を言語化することで,気づきの創発と学習モチベーション向上実現可能性を示した.
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