研究課題/領域番号 |
18K11565
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
酒井 三四郎 静岡大学, 情報学部, 教授 (70170553)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オブジェクト指向 / モデリング / 学習支援 / UML / モデル駆動開発 |
研究実績の概要 |
本研究では初学者のモデリング学習活動を支援し、その習得を促進するシステムを開発する。学習者はモデリング言語としてUMLを使用して、情報システム構築に関わるユーザや開発者の立場で、開発対象の業務やシステムをモデル化するために必要な講義を受ける。そして、教員の設定した課題に対して、演習を通じてその知識を確かなものにしようとしている状況を想定する。先行研究で開発したクラス図とオブジェクト図間にある矛盾を検査する一貫性・明瞭性診断機構を用い、加えて、学習者の修正作業誘導機能、シナリオのオブジェクト図への反映度診断機能、モデル駆動開発によるモデル診断機能など、複数の診断機能を統合したシステムにより、学習者に多面的な気づきを与えるモデリング学習支援システムを開発する。 令和2年度は学習者が自身のモデル図の妥当性を検証・改善できるようになることを目的に、モデル駆動開発 (MDD: Model Driven Development) を用いて、モデルの動作状況を可視化させる学習支援機能を実現した。システムはChangeVision社のモデリングソフトウェアastah*のプラグインとして実装した。MDDによりモデルを動作させ、その実行ログを利用してモデルを検証し誤りの気付きを促進する。学習者の自己改善によりモデルの質が向上すれば、早期段階から指導者のより高次な指導が期待できるようになる。学習者の誤りを想定したケーススタディを行った結果、6ケース中5ケースでモデルの改善に繋がる気付きを与える一定の効果が期待できることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で実現する予定の機能は以下の4つである。(1)シナリオに対応するオブジェクト図作成支援機能の実現、(2)一貫性・明瞭性診断機能に基づく、効果的な修正ガイド機能の実現、(3)シナリオのオブジェクト図への反映度検査機能の実現、(4)モデル駆動開発技術によるモデルベース実行機構の実現。昨年度までの研究によって(1)~(3)を実現し、ある程度の効果があることを明らかにした。本年度は(4)に関して実現し、効果が期待できることがわかった。3年間の研究計画の3年目として、これらの進捗はほぼ計画通りである。ただし、評価実験において被験者の人数や実験方法の点で、十分ではないため、研究計画を1年延長した。システムの完成度を高めるとともに、評価の信頼性を高める計画である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、MDDを利用したモデリング学習支援システムの開発を行い、一定の有効性が見込めることを確認した。現時点では一部の誤りの発見が難しいという課題やユーザインタフェース上の問題があり、改善が必要である。今後更なる支援機能の考案、実装を行いたい。また、実装した機能を用いた効果的な学習支援教材を作成し、実際に学習者に利用してもらい評価を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、予定していた評価実験を計画通り実施することができなかった。令和3年度においては開発したツールの完成度の向上のために追加開発を行う。また、評価の信頼性を高めるために実験の追加を実施する。システム開発や評価実験の実施に伴う記録メディア等の消耗品、謝金、研究成果の発表や公開に伴う経費に使用する予定である。
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