本研究では初学者のモデリング学習活動を支援し、その習得を促進するシステムを開発する。学習者はモデリング言語としてUMLを使用して、情報システム構築に関わるユーザや開発者の立場で、開発対象の業務やシステムをモデル化するために必要な講義を受ける。そして、教員の設定した課題に対して、演習を通じてその知識を確かなものにしようとしている状況を想定する。先行研究で開発したクラス図とオブジェクト図間にある矛盾を検査する一貫性・明瞭性診断機構を用い、加えて、学習者の修正作業誘導機能、シナリオのオブジェクト図への反映度診断機能、モデル駆動開発によるモデル診断機能など、複数の診断機能を統合したシステムにより、学習者に多面的な気づきを与えるモデリング学習支援システムを開発する。 令和3年度は前年度に引き続き、学習者が自身のモデル図の妥当性を検証・改善できるようになることを目的に、モデル駆動開発 (MDD: Model Driven Development) を用いて、モデルの動作状況を可視化させる学習支援機能の開発・洗練を行なった。システムはChangeVision社のモデリングソフトウェアastah*のプラグインとして実装した。MDDによりモデルを動作させ、その実行ログを利用してモデルを検証し誤りの気付きを促進する。学習者の自己改善によりモデルの質が向上すれば、早期段階から指導者のより高次な指導が期待できるようになる。学習者の誤りを想定したケーススタディを行った結果、6ケース中5ケースでモデルの改善に繋がる気付きを与えることができた。よって、一定の効果が期待できることが確認できたと言える。
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