パーソナルLMSを実用的な計算機リソースで稼働させることが可能かどうかを検証するため、パブリッククラウド上のコンテナ仮想化環境においてMoodle3.9を用いたパーソナルLMSを構築し利用テストを行った。次にパーソナルLMSを用いた科目運営に必要となるコースコンテンツ同期機構について検討を行った。データベース同期方式など先行事例の調査を踏まえた結果、大量のパーソナルLMSに対して安定的にコースコンテンツを配信するためにGitHubをコンテンツ配信基盤として用いる方式について試作を行い、技術的な実現可能性について見通しを得た。さらに学習履歴の提供と利用に関する同意の取得と同意内容に基づくアクセス制御に必要となる認証基盤との連携について技術検討を行い、Moodle上の資料閲覧や各種アンケートへの回答状況を認証基盤に即時反映させる機構について試作を行った。 学習履歴のプライバシー保護が学習者にどの程度受け入れられるかを確認するため、「学習支援のために大学の情報システムに提供してもよいと考える学習履歴データ」について担当科目の学生を対象にアンケートを行った。教材の閲覧箇所や視聴時間・注視箇所、オンラインクイズの回答内容や回答時間については匿名化により提供に同意する学生が増えることが確認できた。一方で学習中の姿勢や表情など生体情報に近いデータについては匿名化の有無に関わらず提供に同意する学生がごく少数に限られることが確認できた。 本研究の全体を通じてパーソナルLMS上に蓄積される各学習者の学習履歴をプライバシーポリシーに従って利用するための技術基盤が構築され、学習データ解析技術に基づく時勢代デジタル学習環境の普及に大きく貢献するものと考えられる。
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