研究課題/領域番号 |
18K11578
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
李 凱 獨協大学, 経済学部, 准教授 (10531543)
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研究分担者 |
堀江 郁美 獨協大学, 経済学部, 教授 (50398731)
林 一雅 国士舘大学, 法学部, 講師 (90422815)
熊崎 忠 豊橋技術科学大学, 先端農業・バイオリサーチセンター, 特任助教 (90531541)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教育工学 / e-ラーニング / ラーニングアナリスト / AI / 学習履歴 / 可視化 |
研究実績の概要 |
今年度では、Moodleにおける学習活動の遷移に着目し、様々な機械学習の手法を用いて、期末試験の評価推定モデルを開発した。具体的に、e-ラーニングログデータから時系列データを抽出し、学習活動をファイルの閲覧、URLの閲覧、レポート、システムの四つのカテゴリに分け、各学習活動間の遷移をファイル―ファイル、ファイル―レポート、 ファイル―システム、ファイル―URLなど16種類の学習活動遷移時間を計算した。 また、前処理した学習活動履歴のログデータと期末試験の評価成績と関連付け、諸学習ログデータを特徴量として、回帰木、単純ベイズ、SVM(Support Vector Machine)などの分類器を試した。結果として、3次SVMの精度が一番高く、97.2%であった。従って、3次SVMを分類器として選定し、識別器を作成した。次、ホールドアウト法により10%のデータをテストデータとして評価した結果、識別率が一番高いのは評価Bで、98.3%であった。次は、評価Aは97.7%、評価Cは96.3%、評価AAは95.2%で、一番低いのは評価Fの82.6%であった。平均の総合識別率は97.2%であったため、Moodleの学習履歴ログデータを用いて期末試験の成績ランクを推定することができると考えられる。 その他、作成した識別器を用いて、学習活動の成績ランクを推定できるプログラムを作成した。本プログラムを使って、学期の途中でも期末試験の成績ランクを推定することが可能になり、効果的に学習評価の支援が可能になる。また、脱落の早期発見に参考データを提供することが可能になる。 以上の成果を関連する国内の学会、国際会議にて発表した。最終年度では、識別アルゴリズムの改善、実証実験を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画は諸学習活動の可視化ダッシュボードの開発、AIアナリストシステムの実装並びに予備実験を行う。計画通りに、前年度開発した可視化ダッシュボードに基づき、学習履歴データを再分割・抽出し、学習活動を4種類、活動遷移を16種類に分類した。従来のMoodleログデータは各活動のアクセス時間がしか記録されていないが、学習活動遷移の分類により、各学習活動の滞在時間を可視化することが可能になった。 また、昨年度はAzure Machine Learning Studioを用いたクラスタリング評価手法を検討したが、結果はブラックボックスで数値的評価が不可能なので、今年度はMatlabを使って、独自に評価推定モデルを開発した。14種類の機械学習手法を試し、精度が一番高い3次SVMを分類器として選定し、成績評価推定識別器を作成した。 そのほか、作成した識別器を用いて、成績評価を推定できるプログラムを作成した。本プログラムを使って、学期の途中でも期末試験の成績評価を推定することが可能になり、効果的に学習評価の支援が可能になる。 今年度で得られた関連研究成果をコンピューター利用教育学会研究会、日本教育工学会全国大会、Smart Education and e-Learning国際会議などで発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はMoodleのログデータを用いて、学習活動の遷移に着目し、様々な機械学習の手法を用いて、高い精度で期末試験の評価推定モデルを開発した。しかし、本研究は教室講義とe-ラーニングをブレンドした学習形態を採用し、学生が同じ時間帯で同じ学習内容を行い、高い精度で期末試験を推定評価できた。従来のeラーニングでは、学習の時間や学習形態の違いにより、抽出した特徴量が大きく異なる可能性があるため、識別器の識別精度も大きく変わる可能性がある。コロナの影響で、次年度に教室講義とe-ラーニングをブレンドした授業の実施が不可能になり、完全にe-ラーニングだけの遠隔授業になる。学生が自宅で遠隔学習になり、学習時間、学習形態などが教室講義と大きく異なる可能性がある。また、大学サーバーの更新により、Moodleの利用ができなくなり、BlackBoardのLMSシステムに切り替えすることになる。BlackBoardのログデータの形式がMoodleと大きく異なる。 以上の事情を踏まえ、次年度は開発した評価推定手法を使って、他システムのログデータへの適用を検証する。また、学習形態の変化により識別器の識別精度に与える影響を検討する。 その他、機械学習手法を用いて高い平均精度で成績ランクを推定できたが、どの特徴量が重要であるかはまだ明らかになっていない。成績や理解度に影響を与える要因を解明するため、次年度では、アンケートなど他の評価方法と併用し判断する予定である。 最終年度で得られた研究結果を国内外の論文誌・学会で発表すると共に、評価推定モデルをオープン化することにより、様々な教育現場での活用・普及が期待できる。また、学習活動プロセスの支援、多様化学習成果の評価、LMSの利用効率の向上が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、分担研究者の林、熊崎との研究打ち合わせは、定期的に共同ゼミ、やシンポジウム、研究会に参加した時に行われたため、出張費が生じなかった。またコロナの影響で、いくつかの学会での発表はオンラインで実施され、出張費が生じなかった。 次年度は実証実験とプログラムの改善を行うため、データ解析用パソコン、ソフトウェアの購入、データ保存用NASの購入、研究成果発表のための国内国外の渡航旅費、研究成果を学術雑誌に掲載するための投稿料、英語校閲の費用に使用する予定である。
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