研究課題/領域番号 |
18K11585
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研究機関 | 湘南工科大学 |
研究代表者 |
斉藤 友彦 湘南工科大学, 工学部, 准教授 (50464798)
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研究分担者 |
平澤 茂一 早稲田大学, 理工学術院, 名誉教授 (30147946)
松嶋 敏泰 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30219430)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プログラミング教育 |
研究実績の概要 |
本研究は「回答履歴から学習者の弱点を推定し適切な問題を推薦するプログラミング演習Webシステム」の構築を目的とする.本システムの学術的独自性・創造性は次の二点にある.(ⅰ)学習者の演習回答時における編集履歴と脳波からその演習に対する理解度を推定する.(ⅱ)オンライン・ショッピングで用いられる推薦システムを使い問題を推薦する.特に学習者への推薦・回答履歴とその他大勢の履歴を使った時空間推薦アルゴリズムを使う.研究期間内における本研究の最終目標は,システムの完成及び,評価である.具体的手順は次の通りである.「Step 1. 基礎理論の構築」,「Step 2. 実装」,「Step 3. 実験」,「Step 4. 評価」である. 本年度の主な実績はStep 1.,及びStep 2. に関するものである.Step 1. に関するものとして,眼鏡型センサによる集中度測定方法の研究がある.眼鏡に取り付けられた眼電位センサ,角速度センサ,加速度センサの値から集中度測定アルゴリズムを実装し,その精度について検証を行った.Step 2. に関するものとして,アクティブラーニング向けオンラインジャッジの開発がある.昨年度開発したオンラインジャッジに新しい機能を加え,学習者が安全に楽しくプログラミング演習問題をオンラインジャッジサーバに投稿できるように改良を行った.また,プログラミング学習者向けeポートフォリオの開発・検証も行った. 更に本研究の副産物として,眼鏡型センサを用いたマシンインターフェースの開発や小学生向けプログラミング学習スマホアプリの開発,Virtual Realityを用いた言語学習アプリの開発なども行った.これらから得られた教育に関する実験データは次年度以降の研究に活用する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の主な研究成果は眼鏡型センサを用いた集中度測定法の開発・検証,アクティブラーニング向けオンラインジャッジの開発,プログラミング学習者向けeポートフォリオの開発・検証である.これらは全て本研究で開発するシステムを実用的かつ効果的にするために重要な機能であり,この過程で得られた実験データは全て有用なものである.また,本システムを作る上で開発されるべき機能や手法は全て本質的なものであり,応用範囲も広い.それ故,本研究の副産物としての成果も多数あり,眼鏡型センサを用いたマシンインターフェースの開発,小学生向けプログラミング学習スマホアプリの開発,Virtual Reality(VR)を用いた言語学習アプリの開発,オンラインイベントに特化したWebアプリの開発など,教育工学,生体情報,Webアプリなどの幅広い分野での波及効果が現れている.これらの研究で得られた実験データは次年度以降,本研究にも活用する予定である.これまで想定していなかったが,VRやAugmented Reality(AR)を使った新しく効果的な機能の追加も検討している. 一方,本年度は昨年度開発したオンラインジャッジを運用し,大学生を対象にこれを使い,実験データを取る予定であった.しかしながら,新型コロナウィルスの影響で思ったように実験の被験者を集められず,予定していた実験を実施することはできなかった.そのため,現在までの進捗状況区分を「やや遅れている。」としている. 次年度以降も引き続き新型コロナウィルスの影響を及ぶと考えられる.そのため,完全オンライン等の新しい実験計画について検討をしている.また,今年度得られた開発のためのスキルや実験データを使い,これまでに想定していなかったより効果的な機能追加の可能性についても現在検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度の目標は次の通りである.一つ目は本年度新たに開発・実装した機能の改良及びシステムへの追加である.本年度開発した眼鏡型センサを用いた集中度測定法に関しては更に実験を重ねその精度を高める必要がある.特にプログラミング学習時の集中度に関するデータを収集し,演習問題の難易度や学習者の意欲レベルの判定が可能かを検証する.また同様に本年度開発したプログラミング学習者向けeポートフォリオの検証・改良も進める.特にeポートフォリオを使用したデータを集め,その履歴から学習者のプログラミングスキルが判定できるかを検証する. 二つ目はオンラインジャッジシステムを実際に運用し,多くの大学生に使ってもらい,検証実験をすることである.特に本年度開発したアクティブラーニング向け機能(学習者自身がプログラミング演習問題を投稿し,その問題の良し悪しを他の学習者が評価できる機能)の検証を行う予定である.特にアクティブラーニング向け機能によって,どれほど活発にプログラミング演習問題が投稿されるかは大変興味深い.実際にオンラインジャッジを作成し,これを運用するための一番のハードルとなるのが良質な演習問題を多数用意することである.この問題をクリアすることが可能であり,なおかつ学生の意欲も向上するようであれば,とても有効な成果になる. 二つ目の目標であるオンラインジャッジの運用・評価を遂行する上では幾つかの課題が挙げられる.特に新型コロナウィルスの影響については重要である.本年度も新型コロナウィルスの影響は続き,昨年度同様被験者を集めての実験は難しい.そのため完全オンラインで実施可能な実験計画を立てる必要があるが,それにはセキュリティ対応を万全にしなければならない.これらを慎重に行いながら,柔軟に検証実験を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由は主に二つである.一つ目は新型コロナウィルスの影響で多くの学会が中止,オンライン開催になったからである.研究成果を効果的に発表するためには対面での発表の方が良いと判断し,いくつかの学会での研究発表を見合わせた.二つ目は同じく新型コロナウィルスの影響により,思うように検証実験が進まなかったからである.本年度は大学生を多数集めた検証実験を予定していたが,社会状況を鑑み,実験を中止した.そのため想定していた研究成果が得られず,投稿や対外発表が進まなかったからである. 次年度の主な使用計画は対外発表のための学会参加費及び旅費である.次年度は新型コロナウィルスの影響も多少緩和され,学会に参加できる可能性も考えられる.その場合,その旅費として使用する予定である.一方,もう一つのシナリオとして,本年度も昨年度に引き続き,多くの学会発表が中止になる可能性もあるが,その際はオンラインで開催される学会を探し,参加・発表する予定である.また,次年度は更にシステムの改良を進めるため,アプリ開発及び検証実験のためのPCを数台購入予定である.
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