研究課題/領域番号 |
18K11588
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
土橋 喜 愛知大学, 現代中国学部, 教授 (00301622)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 学習分析 / 教育データマイニング / 学習管理システム / 時系列クロスセクション分析 / ヒートマップ / プロセスマイニング / 学習履歴データ / 授業集中度 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、授業で活用するためにMoodleから履修者に公開しているデジタル教材の閲覧回数と小テストを利用して、授業への取り組みを可視化するヒートマップ生成の改善を中心に研究活動を行った。前年度の研究では、教材閲覧回数と小テストの結果を活用して、履修者を4つのグループのいずれかに該当するように区分し、授業への取り組みを可視化することを目標にヒートマップを作成した。 今年度は一歩進めてこれら4つグループから顕著な特徴を示す履修者を効率的に見出す工夫を行い、ヒートマップの改善を行った。考案した手法では4つのグループの中で顕著な兆候を示す履修者をグループごとに抽出することができるようになった。これによって教材閲覧回数が少なく小テスト得点も低い傾向を頻繁に示す履修者や、教材閲覧回数は多いが小テスト得点は低い履修者などを発見しやすくなった。このような工夫によって異常値検出と同じような役割が期待できるようになり、取り組みが顕著に不十分な履修者を抽出するために活用できる。さらに履修者全体の授業集中度を表すヒートマップをより分かりやすく改善し、取り組みが不十分な履修者が発生している場合に、ヒートマップ上で特定できるようになり、この研究成果は秋の国際会議で報告した。 また授業中の教材閲覧履歴を利用して時系列クロスセクション表を生成し、授業の教材として「社会データ分析入門」という授業の履修者に公開する試みを行い、授業評価アンケートで感想と意見を求めた。これらの分析結果を今後のシステム開発と履修者にフィードバックする方法の研究に役立てるための検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
授業中の学習履歴の分析をもとに、授業集中度を示すヒートマップの生成に新たな工夫を追加し、ヒートマップの中でそれぞれのグループに顕著な特徴を示す履修者の抽出が可能になった。この工夫により授業への取り組みが不十分な履修者が発生している場合、該当者を見出すことができる。さらに教材を開かない、開いても読まないなど、授業への取り組みが不十分な原因の一部を特定できることから、授業改善への効果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
履修者が学習につまづいた状態を判定するためには、頻繁に変化する授業への取り組み具合を時系列に自動的に評価判定する仕組みが必要と考える。時系列クロスセクション(TSCS)分析とヒートマップは授業への取り組みを可視化できる可能性があるので今後も改善を続ける。さらにヒートマップを授業中に活用するためには、処理の高速化と効率的な自動化や、学習機能の追加を検討する必要がある。これらが実現されれば取り組みが不十分な履修者を早期に的確に見出すことが可能になり、落ちこぼれの防止に役立つことが期待されるだけでなく、教師にとっては授業改善に役立つと思われる。さらに授業中の教師は極めて多忙であり、システム操作の負担を軽減する工夫も同時に検討しておく必要がある。加えてオンライン講義に対応できる教材やテストの作成支援機能が必要になっている。 また現在のところ一般の教師が手軽に収集できるデータは教材閲覧履歴やテスト結果などであるが、今後は各種のセンサーなどを応用して収集可能なデータを増やすことが考えられているので検討している。また多人数のクラスにおいては教師の問題発見や気づきを支援し、教師だけでなく学習者にも分析結果をフィードバックする仕組みが重要になると思われる。 前年度まではパソコン教室を中心にした対面のブレンド型授業を対象に学習履歴データの収集を行ってきた。しかし新型コロナウイルスのパンデミックにより、多くの授業がオンライン講義に移行した。そこで筆者の開発した手法が、オンライン講義ではどのように活用できるかも検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究の進捗状況を鑑み、予定していた購入物品を次年度購入することにし、また予定していた人件費・謝金の執行についても、今年度は見送り次年度執行とすることにしたため。
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