研究課題/領域番号 |
18K11588
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
土橋 喜 愛知大学, 現代中国学部, 教授 (00301622)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学習分析 / 教育データマイニング / 学習管理システム / 時系列クロスセクション分析 / ヒートマップ / 学習ログ / プロセスマイニング / 授業集中度 |
研究実績の概要 |
2020年度は新型コロナ感染症の流行により、教室の対面授業は行うことができず、研究データを収集している授業もオンラインの遠隔授業で行うことになった。そのため当該年度はMoodleやZoomを活用してオンライン遠隔授業を行いながらこれまでの研究を継続した。前年までに開発したMoodle上のpdf教材はWindows対応で作成しており、一年間の遠隔授業においてもそのまま活用できたものが多かった。しかし一部の授業ではMacのパソコンしか所持していない学生への対応が必要になり、授業で使用するソフトの変更や教材の作り直しを行い、そのために多くの時間を費やしてしまい、研究活動にも多大な影響を受けた。 また筆者の研究においては、開発してきたシステムは教室でMoodleを使うことを想定して開発した。Moodleを活用して教材閲覧履歴の収集や小テストを行い、履修者の理解度を把握する試みを行っている。前年までの教室での対面授業においては、背後から履修者のモニターを監視して、小テスト時の不正行為を防止することができたが、遠隔授業では履修者のパソコン画面の状態を監視することが難しかったため、小テストの信頼性において課題を抱えることになった。しかしながら、学習ログの収集は遠隔授業においても、教室での対面授業のときと同じように行うことができたため、今後の研究に活用できると思われる。また前年から継続している学習ログの時系列クロスセクション分析を活用したプロセスマイニングとヒートマップの改善に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在継続している学習ログの時系列クロスセクション分析の研究は、プロセスマイニングの考え方に基づいており、さらにウェブスクレイピングの技術を取り入れたものである。まだ若干の課題はあるものの、50人程度の参加者で授業を行いながら、履修者の教材閲覧履歴について、授業中においても時系列データとして観察することができるようになった。また前年度に行った教室における対面授業の学習ログを使った分析では、ヒートマップにおける履修者の学習パターンの出現頻度が、Moodleの教材クリックストリームや期末テスト得点と相関関係にあることが明らかになり、これによって成績不振者や異常値を見出す支援機能の開発につなげることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
成績不振や学習のつまずきの兆候を早期に見出すことは、教師にとって教授法を改善したり、履修者を指導したりするために極めて有効な支援と思われる。筆者の研究では、授業への取り組み具合や、学習パターンのリアルタイム分析が、成績不振やつまずきの兆候を示す履修者の早期発見に役立つと考えている。現段階では授業への取り組みや学習パターンを分析するためのデータ収集にMoodleを活用しているが、学習ログの分析にかかる時間をより短縮し、授業中でも教師が余裕を持って分析結果を見られるように、高速なリアルタイム処理と効果的なデータ可視化手法の開発が必要である。 筆者が開発しているシステムでは、2020年度のオンライン遠隔授業において、50人前後の履修者の時系列クロスセクションを生成するために、35秒から45秒程度必要であった。授業中に分析結果を見ることはできるが、さらに高速な処理が望まれる。また先行研究では成績不振者にメールで通知することが行われており、筆者の研究においても何らかの方法で履修者に成績不振や異常値に該当する予兆があることを知らせる必要があると考える。学習分析の結果を教師と履修者の双方が観察し、お互いに歩み寄ることができる指導方法と学習パターンを見出すことが重要である。授業の終了時には、履修者各自の授業への取り組みレベルが、学習パターンの分析結果とともに履修者に通知され、教師に対しては授業集中度を可視化できるデータによって、その時の授業を評価するフィードバックシステムも必要と考え、今後の研究課題としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の流行により、参加を予定していた国際会議への出張や国内研究会などへの出張の取りやめにより旅費が未使用となったため。また国際会議参加の取りやめによりネイティブチェックの人件費・謝金が未使用になったため。いずれも次年度に執行する予定。
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