研究課題/領域番号 |
18K11590
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
西口 敏司 大阪工業大学, 情報科学部, 准教授 (80362565)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オンライン映像教材 / 協学過程 / 全天球講義映像 / 視線情報 |
研究実績の概要 |
本研究は,オンライン映像教材を視聴しながら学ぶ状況において,学習意欲の継続が可能な環境の構築を目的としている.オンライン映像教材は,時間や場所を気にせずに学習可能であることが長所であるが,学習意欲が継続せず登録者数に対する修了者数の割合が著しく低いという問題がある.大学などの講義では,講師と複数の受講者が教室という一つの空間を共有し,講師は受講者の様子を観察しながら適応的に授業を進め,受講者は講師や他の受講者の様子を感じながら受講する.このような,協調的な双方向コミュニケーションに基づく学習の過程(協学過程)に身を置くことが対面型授業の特長であると考えられる.一方,コロナ禍において一斉に実施されたオンライン授業の一形態であるオンデマンド型のオンライン映像教材を用いた学習では,受講者は協学過程を把握することができず,対面型の講義に出席することで得られる臨場感や,他の受講者の存在感を得ることが困難であるため,学習の当事者であるという意識が低くなり学習意欲を継続させることが困難であることが経験的に分かってきている. 一方,コミュニケーション・メディアを媒介した他者の存在感に関する概念として社会的存在感という概念が提案されており,また,視線が与える社会的存在感の向上に関する研究では,電子黒板に表示された情報への視線集中により存在感が増すという結果が報告されている.本研究課題では,これらの先行研究の結果に基づき,講義空間に受講者視点の全天球カメラを設置して講義空間を撮影した映像を,視線推定が可能な没入型HMDで複数の視聴者に視聴してもらった際の視線情報を獲得してきた. 2020年度は,これまでに獲得した複数の視聴者の視線情報を強調表示することで,視線情報が受講者の講義に対する集中力の向上や孤独感の解消のための他の受講者の存在感の向上にどの程度寄与するか分析した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
視線の強調表示が講義への集中しやすさと孤独感の解消に与える影響について実験を行った.本実験では,視線強調表示を加える映像は前方の座席で撮影した全天球映像を対象とした.また,視聴者の視線が講義において重要と考えられる対象(講師やスクリーン)に集中することから,全体の4割以上の視線が集中したタイミングで視線強調表示を行うこととした.視線強調表示は表示方法による効果の違いを明らかにするために,対象全体に色を加える方法と,擬似的な視線として対象の範囲内に色を付けた小さな丸を移動させる方法(以下擬似視線強調)の2種類を用意した.被験者8人に視線強調表示なしの映像と上記の2種類の映像,合計3つの映像を1分ずつ,モニターとHMDで視聴してもらい,その後,被験者の性質と集中しやすさ,他者の存在感に関するアンケートを行った.その結果,視聴方法に関わらず視線強調表示を加えた映像の方が集中しやすいことが分かった.これは,視線強調表示により講義において重要な対象に視線が誘導されたことにより,集中しやすくなったと考えられる.一方,他者の存在感に関してはモニターでは視線強調表示なし,HMDでは擬似視線強調表示が最も存在感を感じたと違いが生じた.これは,モニターの視聴においては一目で全体が把握できるのに対して,HMDでは一部しか把握できず,映像内の他者の存在を認識し辛かったためと考えられる.上記2つの結果から,講義における一体感は視線強調表示を行うことで集中しやすさという面では向上したが,孤独感の解消という面では十分向上したとは言えないと考えられる. 一方,2020年度は,コロナ禍の影響により,より詳細な分析に必要なデータを十分に収集できていないという状況である.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,2020年度の分析結果に基づき,協学過程推定モデルを構築し,さらに,構築した協学過程推定モデルに基づき,没入型講義映像の視聴機能と協学過程の共有・可視化機能を持つオンライン協学教材の構築を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由として,情報収集や成果発表のために参加を予定していた,いくつかの学会について,オンライン開催となったり,スケジュールの都合で参加できなかったり,参加日数を短くしたりしたことなどが挙げられる.次年度使用額は,研究成果の発表や情報収集のための参加費・旅費,および,プロトタイプシステム開発のための消耗品等に使用する計画である.
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