研究課題/領域番号 |
18K11597
|
研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
孫 媛 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (00249939)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 認知診断 / Q-matrix / 項目反応データ / 知識追跡モデル / パーソナライズド学習 |
研究実績の概要 |
知的学習支援システム(Intelligent Tutoring System: ITS)においては,学習者個々人の特性と知識状態に応じて最適なパーソナライズド学習を支援し,オンライン学習を効率的かつ効果的に行えるようにすることが重要な課題となる。本年度,我々は認知診断モデルを用いて,学習者の知識習得状態や躓きを診断し学習者にフィードバックするとともに,認知診断モデルに基づいて各学習者の状態に応じた適応型補習問題項目と回答を生成し学習者に推薦する新しい知的学習支援システムAI-Tutorを提案した。AI-Tutorは,適応コース学習,認知診断,個別化問題生成および自動問題解決の4つのモジュールから構成されているが,各モジュールを開発するためのアプローチを提案し,プロトタイプのシステムを実装した。 認知診断モデルは,元来は学習者のある時点での静的な知識習得状況を推定するものだが,学習支援を行うためには,学習者のLearning growth あるいはLearning progressを測定するために,知識追跡(Knowledge Tracing)研究が必要である。本年度では,我々は,学習者の動的な知識獲得プロセス(学習と忘却),および学習者と学習活動による項目難易度の変化を同時にモデリングした新しい知識追跡モデルKTM-DLF (Knowledge Tracing Machine by modeling item Difficulty and Learning and Forgetting)を提案した。実際の公開データセットに対して実施した実験の結果,提案モデルの優位性を検証することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
認知診断モデルに基づく新しい知的学習支援システムAI-Tutorを提案し,実際に学習者の知識習得状態の診断および適応型補習問題項目の提示等ができるプロトタイプシステムの実装を行った。また,学習者のある時点での知識習得状況を推定する認知診断モデルに加えて,学習者と学習活動による項目難易度の変化を同時に捉えlearning growthもモデリンする新しい知識追跡モデルKTM-DLFを提案し,公開データセットを用いて提案モデルの優位性を示した。論文は,該当分野のトップカンファレンスInternational Joint Conference on Neural Networks (IJCNN)やInternational Conference on Data Mining Workshops等に採択された。
|
今後の研究の推進方策 |
パーソナライズド学習を支援するため,Q-matrixや,アトリビュート間の相互作用,項目の識別力,難易度等を取り入れた学習者知識追跡モデルの研究を推進していく。国際大会に参加し,研究動向調査や情報収集を行いつつ,本研究の成果を国際・国内学会や学術論文等を通して発信する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 新型コロナウィルスの影響により,国際大会への参加や情報収集のための旅費等の使用ができなくなったため (使用計画) サーバー利用料や,調査・打合せ,学会発表の参加費および旅費等に用いる
|