オンライン学習が普及し,パーソナライズド学習の重要性が増しているなか、我々は学習ログによる学習分析や認知診断モデルを用いた学習支援の研究を進めてきた。本年度,我々はこれまでの研究を踏まえ,学習データを活用したより効果的な学習支援手法の開発に取り組んだ。まず,認知診断モデルと知識追跡モデルを統合し,学習者の知識状態と学習過程を同時に捉えることができる統合型認知診断・知識追跡モデル (Integrated Cognitive Diagnostic and Knowledge Tracing Model: ICD-KTM) を提案した。ICD-KTMにより,学習者の知識習得状況を即時に把握し,個別化された学習支援を提供することが可能となる。さらに,学習者の知識習得状態を適切に評価するために不可欠なQ-matrixの改善に向けて,オンライン学習における学習者知識評価のための前提関係駆動型Q-matrix改良フレームワーク(prerequisite-driven Q-matrix refinement framework for learner knowledge assessment: PQRLKA)を提案した。これにより,学習者の回答データから知識間の前提関係を推定し専門家によって定義されたQ-matrixを改良することで,学習者知識評価の精度が向上するだけでなく,大規模なオンライン学習環境での応用にも対応できるスケーラビリティを持たせることができ,従来の手法に比べて広範な教育分野での応用が期待できる。研究成果は,国際学会誌Neurocomputingに採択され,国際学会等でも発表を行った。今後も,オンライン学習におけるパーソナライズド学習支援技術の発展に寄与する研究を推進していく予定である。
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